超ゲームウォーカー!

search

天地がない世界を忍者のように飛び回る快感─ハイスピード2Dアクション「DANDARA」レビュー

正直なところ、インディーゲーム市場にはレトロフィーチャーなゲームが増えすぎていて、新鮮味がなくなってきている。昔を懐かしむようなシステムやピクセルアートを採用するだけではもう、古参ゲーマーのノスタル舌を唸らせるのは容易ではなくなった。

僕がDANDARAを手に取ったのは、単にピクセルアートにノスタルジーを刺激されたからだけではない。未だかつて見たことのないプレイを求められる、真に「新しいゲーム」であることを確信したからである。

DANDARA

創造と意思によって成長し続けていた、美しき世界「ソルト」。しかし、自由を疎む者「エルダー」によって人々は抑圧され、孤立していく。崩壊の目前、忘却の瀬戸際をさまようソルトで誰もが失望していたその時、暗闇の中で、希望の少女「ダンダラ」が生まれ落ちた。今に崩れ落ちようとしているソルトを光のように駆け、エルダーの抑圧からソルトを解放する…!

…何を言ってるのか自分でもよくわからないプロローグから、このゲームは始まる。天地が入り混じったカオスなフィールドと、創造を具現化したかのような神秘的なキャラクターたち、そして迫り来るエルダー軍。DANDARAの世界観は実に奇妙だが、それを見事に表現したピクセルアートのおかげで、ゲームプレイがはじまったその瞬間からグッと引き込まれる(タイトル画面のダララン!という弦をかき鳴らすようなSEが気持ち良い)。

多くを語らない、端的な導入は潔い。

壁や天井に張り付きながらハイスピードで飛び回る

希望の少女ダンダラとなったプレイヤーは、混沌と化したソルトの中を上下左右・360度、縦横無尽に飛び回ることになる。

ハイスピードなアクション

スティックを倒すと1本の射線が表示され、ボタンを押すとその方向に素早く移動できる。自分の足で天井や壁を走り回ることはできず、射線で移動できるのはフィールド上の白く光っている部分のみである。したがってダンダラは、マップを探索するときも敵と戦う時も、常に射線を高速で動かしながらボタンを連打し、壁や天井を高速でビュンビュン飛び回ることになる。これがもうカオスったらなく、正直を言うと斬新すぎて慣れるまではかなりストレスが溜まってしまった。しかし、中盤〜後半になると、自分でも驚くような動きがらできるようになってきて、実にニヤニヤできるゲームバランスになっている(心を折らさず、どうか堪えてほしい)。

複数の矢を放つ「ショット」

攻撃は、「自由の矢」と名付けられた矢弾を扇状に打ち出す「ショット」で行う。射程は短く、打つまでに0.3秒ほどのタメ時間を要するため、特徴的な移動手段とあわさって、こちらも慣れるのに少々時間が必要だ(そして、それまでは死にまくる)。

連射可能な長射程の爆弾「ジョニー・B・ミサイル」

ゲームを進めていくと、各所で遭遇するソルトの住民からサブウェポンを与えらえる。サブウェポンはメインの「ショット」よりも使い勝手が良いものが多いが、専用のエネルギーを消費して打ち出すため、使い所を見極める必要がある。

上下左右に飛び回りながら、敵の攻撃を避け、ショットで狙い撃つ。アクションに要求される操作や状況把握のハードルは高く、かなり頭を使うシステムだ。

実はオーソドックスなメトロイド・ヴァニア

各セクションのネーミングセンスも必見

奇怪な世界観と特徴的な移動手段を除けば、その他の要素はオーソドックスなメトロイド・ヴァニアゲームに準じている。マップを開きながら、まだ開拓していない部屋を探索したり、容赦なく襲いかかってくる敵の群れをくぐり抜けた先で待ち受ける中ボスたち(彼らのデザインも秀逸なので必見だ)。オブジェクトから手に入る「ソルト(こちらはコインのようなもの)」を使ってダンダラのパラメータを強化できる一方で、フィールドで力尽きるとそれまでに貯めた全てのソルトをそこにドロップしてしまう。興味深かったのは、自分以外の何者かがソルトをドロップした痕跡が見受けられること。オンライン対応タイトルではないのでただの演出だと思うが、希望の少女として目覚めたのは自分だけではないのかもしれない、という想像も働く。洒落た演出である。

ゲームオーバー地点に獲得したソルトが残る─メトロイドヴァニアのお約束だ。

この、メトロイド・ヴァニア的な探索要素や謎解きは、一般的なものにくらべてかなり易しいつくりになっているので、探索で詰まるようなことはないだろう。問題は…アクションに求められる難易度である。

何度も挑戦したくなる絶妙なゲームバランス

ザコ敵の種類や行動バリエーションが多いうえに、彼らは容赦なく襲いかかってくる。そして、焦ってしまうとそれが最後。移動もまともにできずに敵にボコボコにされて即死だ。そのため、おそらく多くのプレイヤーが何度も何度もゲームオーバーを味わうことになるだろう。チェックポイントから現場に戻り、そして死に、またチェックポイントから現場にもどり…。

そう、DANDARAは死にゲーである。

禍々しさとコミカルさを併せ持つボスたち

暗く奇妙な世界観、斬新なアクション、容赦なく襲いかかってくる敵。そして、シンプルで淡白なストーリー。この、難しいけれど理不尽なバランスでは決してない、ダークソウルシリーズのようなハードな遊び心地は、好きな人はとことん好きになれるはず。何度も繰り返せば段々と、じりじりとマップが開拓されていく充足感、うむ、やめられない!…このゲーム、明らかに玄人向けである

ちなみに、死にゲーの割にはチェックポイントから現場まで戻る道のりが長く、そして移動も癖があるため、何度も繰り返すリトライにストレスが溜まってしまったことは事実。チェックポイントはもう少し細かく設置しても良かったかもしれない。

弦楽器とシンセサイザーがおりなすサウンドトラック

良いゲームは音楽も良いという個人的なジンクスを、DANDARAはバッチリ守ってくれた。弦楽器の力強さとシンセサイザーの不穏な旋律が織りなすダークな楽曲たちは、DANDARAの世界観に見事にマッチしている。ローンチトレイラーで使用されているような、ボス戦で使用されるアップテンポな楽曲たちが堪らなくカッコよくて、ついサウンドトラックを買ってしまった。

玄人ゲーマーにおすすめの一本

ソルトの住人タルシラ─各所で遭遇する彼らも変なのばかり。

DANDARAを最初に知った時は「また奇をてらったゲームが出たな」と感じたものだ。しかし、一度手にとって遊んでみると、しっかりと考え抜かれたシステムと調整を怠っていない見事なゲームバランスに感嘆を声を上げざるを得なかった。各プラットフォームへの移植も丁寧で、それぞれの操作性で問題なく遊べるところも好印象。Switch版にいたってはHD振動をも取り入れた気の利いたバージョンになっている。

新しいもの好き、メトロイド・ヴァニア好き、死にゲー好きはもちろんのこと、本作は「新しいゲーム」を求めているすべての玄人ゲーマーにおすすめできる傑作だといえよう。

DANDARAは、NintendoSwitch,PS4、Steam、スマートフォン向けに配信中。

DANDARA – Nintendo Switch

この記事をSNSにシェア

feedly Feedlyで購読

この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

アクセスランキング