超ゲームウォーカー!

search

不気味可愛いアートワークで、理解不能な恐怖を楽しむ「LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-」

今日も超ゲームウォーカーにお越しくださりありがとうございます。コウノ アスヤ(です。

黄色いカッパを着た小さい女の子が、巨大なコックの目を盗んでテーブルの下を進む…。最近、ゲーマー界隈でそんなプレイ動画が少しばかり話題になりました。キャラクターの造形はおぞましくて不気味なのに、グラフィックはデフォルメされつつも質感がフォトリアルで美しい。ホラーゲーム「リトルナイトメア」が発表された当時のファーストインプレッションは、そんな感じでした。

普段ホラーゲームはあまり遊ばないのですが、ルックスが最高にイケてるという理由だけで購入して一気にクリア。ホラーゲームとしてとても完成度の高い、堅実な作りのゲームでした。

LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-

リトルビッグプラネットやテラウェイといった名作を生み出したTarsier Studiosが、バンダイナムコエンターテイメント(バンナム)とタッグを組んで開発したホラーゲーム。ホラーとしては珍しいベルトロール式の2Dスクロールゲームとなっていて、プレイヤーは黄色い雨合羽をかぶった小さな少女「シックス」を操作し、どこだかわからない不思議な建物の中を進んでいきます。

キャラが可愛いくて不気味!

ホラーゲームで何を言うかと言われるかもしれませんが、とにかく本作はキャラのデザインがめっちゃ良いです!

黄色い雨合羽で画面に映える、主人公「シックス」

主人公の女の子「シックス」をはじめ、「ノーム」や「双子のシェフ」など、デフォルメされて可愛さを持ちつつも不気味で気持ち悪い絶妙なキャラクターデザイン。もう、発表されたときからそのビジュアルだけでプレイが確定してました。それぐらいデザインが良い。特に今回はホラーゲームなので、この「可愛さと不気味さの共存」はかなり秀逸だと思いました。

アホみたいな顔面マスクと猟奇的なクッキングが魅力的な敵キャラ「シェフ」

ほら、可愛くて無邪気な存在って怖いじゃないですか。千と千尋の神隠しの「坊」とか、(可愛くないけど)呪怨の「としおくん」とか。そして、キャラのデフォルメが効いてはいるものの、質感や光の加減がリアリスティックなので暗くて不気味で、とてもホラー。このバランスは秀逸だなと思いました。

ことばを一切使用しない恐怖

テキストやセリフが一切使われないところも、このゲームを語る上ではかかせないポイントですね。主人公の境遇から敵キャラの目的まで、プレイヤーは明示的に何かの情報を与えられることなく、想像と妄想でそのストーリーと世界観を補完していくことになります。

ここはどこなのか、なにをすればいいのか、プレイヤーには何も語られない。

この語りすぎない手法は、昨今のインディーゲームやDL専用ゲームでよく見られますが、ことホラーに関しては特にこの手法が効いているように思います。人はわからないものに恐怖し、意味を与えることによってその恐怖を克服する。リトルナイトメアを遊んでいると、「わからないから怖い」「怖いから先に進んで答えを探したい」という感情でプレイを進め、語られないから自分で妄想して補完し、恐怖を克服していきます。この仕組みはやっぱり楽しい。怖いけど。

逃げることしかできない!

このゲームは、敵に遭遇しても隠れるか逃げることしかできません。どれだけ大きくて、どれだけ不気味でおぞましい存在に遭遇しても、こちらからは何もすることができない無力感。見つからないかドキドキする緊張感。

プレイヤーの緊張感を体現するかのように、コントローラーがドクンドクンと振動する。

これ、めちゃくちゃ良いと思ったんですが、敵に見つかりそうな時、ドクン、ドクンとコントローラーが鼓動するんですよ!しかも、最初は自分自身のドキドキとシンクロしてるんでコントローラーが振動してることになんて気づかないんですよ!ゲーム中盤、慣れてきたあたりで「コントローラー震えとるやん」と気づく。これ、振動によって恐怖を助長されていたって考えて良いと思うんです。すばらしい仕様ですよね。

4つのホラーを楽しめる

アクションゲームである本作は大きく分けて4つのエリアで構成されていますが、それぞれのエリアでホラーの趣が違うのが面白かったです。最初の洋館エリアはオーソドックスな洋ホラー。次のキッチンエリアはスプラッターホラー。ゲストエリアはパニックホラー、最後は和風ホラー、といった具合ですね。

洋風→猟奇→パニック矢印和風と、ホラーの雰囲気が変わっていく。

ホラーはジャンル毎に怖さのベクトルが違うと思いますが、エリアによってこれを分けて、かつ全体として違和感のないバランスにチューニングしてあるので、違和感なく飽きずに楽しめます。特に後半の2エリアは、和洋折衷なデザインの中でホラーが展開されるので、「これは、新しい!」と思わず唸ってしましました。ちょっと千と千尋の神隠しっぽかったですが、それもまた良し。

既視感とオリジナリティ

葉に衣着せずに言うと、キャラや背景といったアートワーク以外のあらゆるところがPlaydeadのホラーゲーム「INSIDE」にとても良く似ています。パクっているとまでは言いませんが、かなり影響を受けているように見えます。

INSIDEが好きな筆者にとっては、既視感のある光景が多かった。

肯定的に捉えるとすれば、こういったホラーゲームが一つのジャンルとして確立しつつあるというところなのでしょうけど、個人的にはスタートしてからしばらくの間、どうしてもINSIDEがチラついてオリジナリティを感じることができませんでした。少し残念。

ただ、やはりアートワークはかなりオリジナリティがあるように思いました。可愛くもあり怖くもある絶妙なデザイン。後半に登場する和風のステージは、外人によるエセ和風ではなく(笑)、バンナムがリードしているからこそできる「これぞ和風」なデザインになっています。見事でした。

横スクロールホラーというジャンル

ホラーゲームと聞いてまず思い浮かぶのは、バイオハザードや零などの3Dアクションゲームだと思いますが、やはり昨今、INSIDEのような3D横スクロールタイプのものが増えてきているように思います。ビジュアル的には3Dで美麗なグラフィックを用意しつつも、操作はシンプルに横へ横へ進んでいく。こういった仕組みのホラーゲームのメリットは意識が世界観に向くことだと思いました。

得体の知れないモノに対する恐怖を楽しむには、最適の手法なのかもしれない。

つまり、操作や謎解きにエネルギーを割くこと無く、背景やキャラクター、ストーリーといったポイントを楽しむ(怖がる)ことに重きをおいたジャンル。もちろん、簡単な謎解きやアクション要素はあるため、プレイヤー=自分というゲーム的没入感はそのままです。

操作系に違和感

「移動」「しゃがむ」「ライターをつける」「掴む(投げる)」以外にアクションはなく、覚えることが少ないのはコンパクトで良かったです。が、なんかアクションとボタン配置がイマイチしっくりこず、最後まで慣れることができずに終わってしまいました。PS4版に限った話ですが、「走る」と「掴む」をなぜLとRに配置したんでしょう。「アナログ入力だから、力を込めるアクションに最適だ」という理由なのかもしれませんが、アクションが少ないのにわざわざアクションをコントローラー全体に散らさなくても良かったのでは?

決して雰囲気ゲー止まりではない、良質なホラーゲーム

美麗かつ不気味さをうまくデザインしたアートワーク、簡単な操作とシンプルなゲーム進行、そして想像を大事にした語りすぎないストーリー。体的に少し既視感がある以外は、総じて良質なホラーゲームでした。値段も安く、プレイ時間も短い。PS4を持っているなら是非この夏オススメしたいホラーゲームです!

LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-は、現在PS4とSteamで配信中です。

PlayStationStoreSteam

一応Amazonには輸入盤パッケージがあるみたいです。

この記事をSNSにシェア

feedly Feedlyで購読

この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

アクセスランキング