レトロなビデオゲームのキャラクターに扮した宇宙人が地球に攻めてくる映画「ピクセル」の公開が迫ってますね。

パックマンやドンキーコング、ギャラガなど日本のレトロゲームが多く登場するこの映画に、僕はワクワクが止まりません。しかも、この映画の中では、ナムコによる名キャラクター「パックマン」が、他の名立たるキャラクター達を抑えてメイン級の扱いを受けています。メイン級すぎて、制作者の岩谷徹さん(本人ではないですが)が登場する始末w

でも一体なぜ日本の、しかもレトロゲームばかりがフィーチャーされているんでしょうか?しかもパックマンがメイン級に。

歴史があるから?レトロで可愛いから?だとしたら、その考えは半分正解で、半分は不正解かもしれません。

パックマンとは

初代パックマン
パックマンは、1980年にナムコ(現バンダイナムコ)から発売されたアーケードゲームです。発売当時から同社の看板タイトルであり、作中に登場する黄色いパックマンは、今では世界で最も知られているゲームキャラクターのうちの一人になりました。最近でも、パックマンミュージアムがリリースされたり、任天堂のスマブラに登場したり、テレビアニメ化されたりして、海外ではソニックの次に人気なんじゃないんですかね。多分。

アメリカでは日本以上に大ブームとなり、「Ms. Pac-Man」「Jr. Pac-Man」といった作品も登場しました。2005年には「最も成功した業務用ゲーム機」としてギネスも認定されるほど。ほぁ。

2013年にニューヨーク近代美術館「MoMA」へ収蔵される

MoMA
ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、世界的に有名な近現代美術専門の美術館です。そんな美術館に2013年、ついに我らがビデオゲームが収蔵されることが発表され、当時はゲーム業界やアート界が賛と否で盛り上がりました。MoMAのキュレーターに選ばれたのは以下の14本。

■パックマン(1980)
■テトリス(1984)
■アウター・ワールド(1991)
■ミスト(1993)
■シムシティ2000(1994)
■ビブリボン(1999)
■ザ・シムズ(2000)
■塊魂(2004)
■EVE Online(2003)
■Dwarf Fortress(2006)
■Portal(2007)
■flOw(2006)
■Passage(2008)
■Canabalt(2009)

日本製のゲームは14本中3本。その中でも最も古いゲームとしてパックマンは選ばれています。

ゲームは優れたインタラクション・デザインであるということ

パオラ・アントネッリ
MoMAのキュレーターであるパオラ・アントネッリによるプレゼン動画「『パックマン』をMoMAに収蔵した理由」で、彼女は「ゲームは芸術ではなく、優れた『インタラクション・デザイン』であり、このデザインとしての側面が、ゲームをMoMAに収蔵する理由である」と言っています。

インタラクション・デザインとは – 物理的・仮想的かを問わない特定のシステムを利用するユーザーに対して、入力されたアクションに対する適切な反応をデザインしたものの事。iPhoneのロックを解除した時のアイコンの挙動や、ツイートした時の「小鳥の鳴き声」などがそう。

レトロなゲームは見た目や音がシンプルで美しいので「余計なものが無い」という点も重要なのだそうです。収蔵された14本を見ると、どれもフォトリアルすぎず、シンプルで分かりやすい見た目である事が見て取れますね。パオラ氏は「ゲームは最も純粋なインタラクション・デザインである」と言い切っています。

ゲームは純粋なインタラクション・デザイン…いい響きですね。

ちなみにこの動画、とうぶつの森なんかも引き合いに出しながら「ゲームのデザイン」についてメチャクチャ面白く語られているので、暇な時にフルでご覧になることをおすすめします。
『パックマン』をMoMAに収蔵した理由

パックマン=革新

人型パックマン
海外のゲームライターが、パックマンの特筆すべき点として以下の3つがあると述べています。

女性に向けたこと

インベーダー等が流行していた当時、アーケードゲームは「男の子の遊び」として認知されていましたが、制作者の岩谷徹さんは「女の子でも遊べるゲームを」ということで、超覚えやすいシンプルな見た目、可愛いデザイン、簡単で分かりやすいルールなどを盛り込み、ゲーム歴史的に見ても重要で価値のある初代パックマンを作りました。
ピザピザを食べる女性を眺めていたら、パックマンを思いたとかいないとか。

ゲームデザインの革新性

パックマンのゲームデザインは、とても優れたものでした。迷路を逃げ回ってエサを食べることが、ステージクリアに繋がり、それが回避になもり、そしてパワーエサで逆襲してもモンスターが死なずに巣に戻るのです(倒すこともできる)
この、「一つのアクションに複数の意味を持たせる」構造は、先日任天堂が発売したスプラトゥーンのゲームルールに通じるものがありますね。

スプラトゥーン「撃つ」というアクションに「塗る、倒す、逃げる、助ける」といった目的を、「潜る」という行為に「隠れる、移動する、補充する」といった目的を詰め込んだスプラトゥーンも優れたデザインだと言える。

物語が感じられること

ステージとステージの間に、簡単なデモシーンが流れるのがパックマンの魅力ですが、これは「プレイヤーの緊張を解す」「ゲームに世界観を与える」といった意味を持っていました。この構造は、昨今のゲームでは当然のように仕込まれていますよね。インベーダー等には無いものでした。
結果的にパックマンの世界観やキャラは愛されることとなり、海外ではアニメ作品までもが作られるまでに人気になりました。

重要なのは想像性を湧き建てるか否か

アウターワールドパックマンと並んでMoMAに収蔵されたアウターワールドも、僕の創造をゴリゴリ駆り立てる。

ゲームがその他の優れたデザインの椅子や電化製品と決定的に違うのは、それ自体が物語をもつという部分でしょう。これは、ゲームが優れたデザインであると同時に、アート的な側面も持つこともあるということでもあります。優れたゲームはプレイヤーにより強い能動性を与え、絵画や映像作品のように、「個人の創造を掻き立てる」ものなのです。
そういう意味では、レトロゲームほどプレイヤーの創造を掻き立てるゲームは無いでしょう。あのシンプルな見た目から、僕たちは広大な世界と物語をイメージしていたのだから!

あとは単純に、やってて面白いってところでしょうね。笑

創造性が襲ってくる映画「ピクセル」

街を食べるパックマン
SF映画における侵略者って、最新ゲームのような超絶グラフィックのキモい怖いエイリアンでもいいわけじゃないですか。でも敢えて、映画「ピクセル」ではパックマンのようなレトロなピクセルデザインのものになってるんですよね。

ピクセル状の敵が攻めてきたら面白くね?的な発想ももちろんあると思いますが、それ以上に僕たちの脳には、パックマンやドンキーコングのような、あのシンプルで可愛いグラフィックに対する「世界観」や「思い出」が積み重ねられているハズです。かつて彼らを通して育んだ「創造性」が、そのままの姿で僕たちに侵略を開始する。僕はこの演出に対して、嬉しいのと同時に、「恐怖感」を感じています。それがこの映画の制作者の意図だと信じたい。

いつも僕らがゲーム上で行っている行為(楽しいこと、あるいは残酷な事)は、そのままの姿で実際の世界に顕現すると、どうなるのでしょうか。シンプルな見た目でも、恐怖やスリルといった「感情」や「物語」は生成されるんでしょうか。

パックマンが岩谷徹という一人のクリエイターによって生み出され、人々に愛され、デザインとしてMoMAに収蔵され、そして今度は、僕たちの世界に侵略してくることに、僕はやっぱりワクワクが止まりません。はやく!早く見たい!

映画「ピクセル」公式サイト