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恐怖とスリルがゾクゾクくる。人狼×ノベルゲーム「レイジングループ」が面白い!

今日も超ゲームウォーカーにお越しくださり、ありがとうございます。コウノ アスヤ(です。

人狼」という対面パーティゲームがあります。これは、複数人で集まり、人間と狼に分かれてお互いの正体を探り合いながら毎ターン数人づつ人数を減らしていくゲームなのですが、これがメチャクチャ面白い。そして、「人狼」は、その秀逸なルールと独特の面白さから、ゲームの世界観やルールをベースにした様々な派生作品が生まれる事があります。ドラマや映画、バラエティ番組などが記憶に新しいですが、そんな中で珍しくノベルゲームに派生した作品が、「レイジングループ」というゲームです。

今回、幸運にも株式会社ケムコ様から、なんとiOS版をご提供していただいたので嬉々としてこれをプレイ!いやぁこのゲーム、贔屓目を抜きにしてもめちゃくちゃちゃ面白いゲームでしたよ!

「人狼」をベースにしたJホラーサスペンスADV

レイジングループは、株式会社ケムコが開発・販売しているノベルゲーム(スマホ、PSVita、PS4対応)です。「和風伝記ホラー」と「人狼」を融合した「長編ホラーサスペンスノベル」として、人狼ユーザーやコアなノベルゲームファンの間で噂になっている作品であり、個人的にも昨今のノベルゲーム界隈の中でもトップレベルの面白さを持っていると感じるゲームでした。

主人公「房石陽明」とヒロイン(?)のうちの一人「芹沢千枝実」

「和風伝記ホラー」とあるように、本作は「好奇心」「謎」「人の死」などを物語の駆動力にしてある「怖くてスリルのあるお話」になっています。「ひぐらしのなく頃に」とかとなんとなくイメージは近いのではないでしょうか。

ちなみに、今作はべつに「人狼」を知らなくても楽しめるのは間違いないですが、知らない方はWikipediaなどでルールを頭に入れておくと内容が理解しやすいかと思います。

ループする和風の人狼

これを褒めるべくして何を褒めるという感じですが、レイジングループはシナリオがめちゃくちゃ秀逸です!「人狼」というゲームのルールや世界観を、見事にノベルゲームという形で再構築してあるんです。日本を舞台に、伝承やしきたり、土着信仰などを巧みに織りまぜながら構成した「人狼的」シナリオはただただ「すげぇ」としか言いようがありませんでした。

あらすじは以下のような感じ。

旅行者・房石陽明は、バイク旅行中に道に迷う。コンビニ店員の案内で集落への道を進むが、崖で転倒してしまう。そこに現れた芹沢千枝実の助けで藤良村(ふじよしむら)にある休水(やすみず)という集落に身を寄せるが、霧が発生して房石は謎の生物に殺されてしまう。しかし直後にはバイクで道に迷っているところに逆行していた。選択を変えてその場を生き延びた房石だったが、村の伝統であるおおかみ様をくくる為の「黄泉忌みの宴」に巻き込まれることになる。

「黄泉忌みの宴」人に紛れた人狼に勝利するため、毎晩合議で一人をくくる(殺す)

一度死んでループに入った主人公が遭遇する「黄泉忌みの宴」。「人に化けているおおかみを、合議で選んでくくる(殺す)」とか「狼は毎晩一人を殺す」などのルールがあるんですがこれ、まんま「人狼」のルールそのまま。「人狼」を遊んだことがある人なら「あー!」となること間違いないし、もちろん「人狼」を知らない人でもちゃーんとわかるように主人公が丁寧に整理してくれます。個人的には主人公が定期的に自分の頭の中を整理して推理をはじめる展開のおかげで、ついていけていたところがあります。推理パートって、燃えるよね。

フィクションに抜けがない

はじめは疑わしい人狼の存在も、次第に現実味を帯びていく

現代を舞台にしたホラーとが気をつけないといけないのは「ありえなさすぎて怖くない」になってしまうことです。いくらテクニカルに、ファンタジックに和風ホラーを描いても、「ありえねー」と一蹴されてはすべてが台無しです。

「まともな人間」による「非現実の否定」にも抜けがない

その点今作は、「合議で殺す人間を選ぶなんで狂ってる」「人が殺されて、なぜ警察を呼ばないのか」「村から脱出すればいいじゃないか」といった、プレイヤーが物語に対して当然感じるような疑問を、主人公が代弁してくれます。ありえないんだけど、もしかしたら、ありえるかもしれない。そうならざるを得ないかもしれない、そう感じさせてくれるのはホラーとしてとても質が良い作品だと言えます。

ループ設定とプレイヤーのシンクロ

電ファミニコゲーマーのインタビューで、シナリオライターのamphibianさんは、人狼の本質を「コミュニケーションと試行錯誤のゲームである」と言語化していますが、これはまさに「レイジングループ」そのもののコンセプトだとも言えるでしょう。

主人公は何回死んでも1日目に「死に戻る」

主人公は「死に戻り」と呼ばれる特殊な力を駆使して問題を解決しようとなんども同じ時間を繰り返しますが、その度に、何度も同じキャラクターと交流し、その経験を駆使して宴を攻略していきます。この繰り返しがまさに「コミュニケーションと試行錯誤」であり、人狼の本質とゲームのコンセプトが一致していいる感があります。「人狼」というゲームを遊んでいるようでもあり、ノベルゲームを攻略しているようでもある、不思議な感じ。二つが重なって、面白さが倍増しているとすら思えます。

あなたは、誰をえらぶ?

選択肢に「人の命の重み」がのしかかる

黄泉忌みの宴で誰に投票するのか、夜に誰を人狼かどうか調べるのか、それは物語を駆動させる大事な判断です。それをプレイヤーはすべて選択肢で選ばされることになり、自分の判断によって、人が死に、人が助かり、物語が進んでいきます。このスリルはすごかったですね。自分はおかしなことをしているとわかっているのに、状況に飲み込まれて正常な判断ができなくなっていく感じ。誰を疑い、誰を信じるのか。これほどまでに選択肢を迷ったゲームは他にありません。

キャラクターが個性的。だからこそ、怖い

村に住む青年「室匠」はじめは他人行儀な彼も、繰り返すうちに心を開き始めるが…

人狼というゲームは、相手がどんな人間なのかでとるべき戦法が変わってきます。なので、出てくるキャラクターがみな個性的で愛着が湧くかどうかはすごく大事なポイント。つまり、キャラクターを知れば知るほど情報が増えて有利になる反面、情が湧いて不利にもなる。そのスリルをプレイヤーに体験させるには、個性的で魅力あるキャラクターを用意する他にありません。その点、レイジングループのキャラクターはばっちり魅力的でした。「かわいい奴」「こわい奴」「憎めない奴」など、すべてのキャラの個性が際立ってます。どうか、「こいつ、頭良いな」とか「こいつ、見かけによらずかわいいな…」といったキャラクターへの素直な感情を持って、「宴」でその期待を裏切られてください(笑)

遊びやすさ

好きなチャプター、好きな選択肢にジャンプできる「シナリオチャート」はとても便利だ

ノベルゲームとして、とても遊びやすいシステムになっているところも好印象です。各選択肢の場所にはチャート画面から一発でジャンプできるし、特定のエンドを見なければ選択できない「ロックされたルート」も「番号付きの鍵マーク」によって見分けられます。周回前提のゲームでこれは嬉しいかぎり。多くのノベルゲームは後半はずっとスキップし続けることになりますから…。

スマホゲーとしての操作性はイマイチ

人狼ベースのノベルゲームとしては、相当な完成度でとても楽しめた一方で、僕が遊んだiOS版では「スマホゲームとしての操作性」には改善の余地を感じました。箇条書きにすると、

  • チュートリアルが長く、しょっぱなから白ける。
  • バックログを閉じるボタンが左上で操作しづらい
  • チャート画面の一覧性とが悪く、スクロールもしづらい
  • 画面下部の各種メニューボタンが小さくてタップしづらい。

などなど…。特に序盤の長ったらしいチュートリアルは普通に萎えポイントなので個人的にはマイナスでした。操作性に関しては、アップデートや次回作で改善されると嬉しいですね。あとは、「一部ボイス入り」の「一部」のチョイスが変だったような…。ここぞという時に流れなかったり、かと思いきや地味なシーンで流れたり。

万人が楽しめるノベルゲーム

最後に少し不満点を述べましたが、実際のところノベルゲームとしての完成度はかなり高いと思います。人狼好きはもちろんのこと、ノベルゲーム好きにもオススメできるものになっていると思うし、さらに言うなら、ノベルゲームの入門としてもオススメしできるゲームですね。小難しい前提知識が必要のないストーリーテリング、恐怖と好奇心をフックにした恐怖とスリルを楽しめるシナリオで、どんなプレイヤーが遊んでもきっと期待に応えてくれるでしょう。そして、このゲームを遊んだあとはきっと「本当の人狼ゲーム」をやりたくなることでしょう。なんせ、僕はそうですから。

あー!人狼やりてぇー!

ケムコさん!楽しいノベルゲームをありがとうございました!

レイジングループ 公式ウェブサイト

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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