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カラクリに満ちた屋敷がゾクゾクして楽しい。けれど不気味で後味が悪い「フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと」をレビュー

気分を盛り上げるオープニングや、これからの冒険を期待させるイントロなどは一切なく、プレイヤーを箱庭に放り込んで、唐突かつ淡白にプレイが始まる。ゲーム内にはモンスターなどはおらず、バトルもなく、成長要素なども一切ない。ただひたすらに歩き回って世界を探索し、自分自身でストーリーを紐どいていく。このようなゲームは「ウォーキングシミュレーター」と呼ばれていて、個人的にすごい好きなジャンルのうちの一つでもあります。

フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと」もそんなゲームのうちの一つ。ゲームを開始した瞬間、海の上を走る船の甲板に放り込まれ、呆然としてる間にゲームが始まります。くー!たまんねぇなおい。

フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと

フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと」は、アメリカのゲームディベロッパーGiant Sparrowによる、一人称視点のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは、関係者が代々奇妙な死を遂げ続けている「フィンチ家」の最後の1人エディスとなり、ワシントン州に無人で残された屋敷を探索して、フィンチ家に潜んだ謎を解き明かしていきます。

独特のアートワークで高く評価された「The Unfinished Swan」を生み出したGiant Sparrowならではといった雰囲気で、今回もアートワークのユニークさがバチバチいってます。プレイ感は2~3程度。値段も安いので、かなりコンパクトなゲームです。

操作可能なタイトル画面。空中にテキストが浮かび上がる独特な表現。

増改築が繰り返され、もはや屋敷としてのアイデンティティを失っているに近い「フィンチ家の屋敷」。屋敷に突入する前から、ゾクゾクとワクワクが止まりません。

増改築が繰り返されてもはや屋敷の体を成してない。

屋敷の中は、とにかく部屋と物が多くてゴチャゴチャしてます。各オブジェクトが個別に反応してくれることは殆どないんですが、1人称視点によってじっくり舐め回す様に探索できるので「気がついたら長い時間同じ部屋に居座ってしまってた!」みたいな事が結構ありました。作り込まれた3D空間ってとても引き込まれるのです。

生活感が思いっきり残ったままの屋敷にゾクゾク。

そして、なによりフィンチ家の屋敷は、異常な量のカラクリと、隠し部屋・隠し通路が多いのなんの。子供部屋のドアは封印されていて覗き窓が付いていたり、地下の物置へはオルゴールの仕掛けを解かないと降りる事ができない。そんな、まさしく「奇妙な屋敷」を探索するのがやっぱり楽しくて、「秘密基地」という概念にロマンを感じていた子供の頃のワクワクを感じてしまう。ウォーキングシムって、「自由に歩き回れる」というゲームならではの特徴が、これ以上ないくらいぴったり合うジャンルなんですよね。

本棚に隠された起動レバー。このような仕掛けが無数に存在する。

プレイヤーの目的は、そんな奇妙な屋敷に代々住んでいた「フィンチ家」に何が起こったのかを探ること。屋敷の中に点在している手記やキーアイテムを調べると、当時の記憶を追体験するモードに突入します。これがまた、それぞれユニークなミニゲームのような感じになっていて、淡々としがなウォーキングシムに良いスパイスになってました。事故によって死んでしまった人物の場合はアクションゲームのようになっていたり、精神が病んでしまった人物の場合は抽象的で気が狂った様な表現になっていたりして、それぞれの振れ幅がなかなか大きくて飽きない。

浴槽の中で想像を膨らませる赤ちゃんのシーン。
海岸でタコを飛ばし、空中に浮かぶテキストを回収するシーン。

これら、特に難しいとか面白いというような感想は抱きませんでしたが、一つのストーリーテリングの手法として、ゲームという媒体をうまく利用してるな〜と関心しました。そうして判明した人物と結末は、次々に人物相関図に徐々に描き足されていきます。始めは殆ど白紙だった手帳に、どんどん情報が描き足されていくことで、ゆっくりとはいえ物語の深淵に迫っている感覚を感じて、プレイする手が止まらなかった。

家系を描いた相関図が、少しずつ完成していく。

ウォーキングシムというジャンルの良し悪し

改めて、ウォーキングシムってすごい地味だなぁと感じました。この手のゲームって往々にして最初から最後までどんよりとした雰囲気で進むし、派手なイベントもないし、遊び終わったあとも特に晴れやかな気分になることもない。なぜか歩くスピードもすごい遅いし…。笑

けど、だからこそ面白いというもの。マリオやポケモンみたいな大衆向けのゲームにはない、ネガティブなプレイ感。人間の内側に語りかける様な、作者の内面性が窺い知れる様なゲーム。ウォーキングシムにミステリー調のゲームが多いのは、このジャンルが、「遊び」としてのゲームというよりは、どちらかというと作者の個性やこだわりを如実に反映した「アート作品」に近いからかもしれません。

幸福な消失Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失

古くは「ミスト」のようなコマンド式のゲームから、最近では「Gone Home」や「Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失」などのリッチな箱庭ゲームまで。その世界の背景を紐解き、自分なりの落とし所をプレイヤー自身が見つけることによって完成するこのタイプのゲームは、「好きが作って、好きが遊ぶ」ような仕組みで成り立ってるような気もします。数時間で遊び終わるコンパクトなジャンルとして、これからもひっそりと文化を形成していってほしいですね。

「フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと」は、PS4とPC(Steam)で配信中です。ドヨーンとした読後感で余韻が続く様な作品が好きな方は、ぜひ遊んでみてください!

フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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