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オタク文化を語るのに手塚治虫はもういらない。「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」に行ってきた

ニッポンのアニメ*マンガ*ゲーム展

本日も超ゲームウォーカーにお越し下さりありがとうございます。コウノ アスヤ(です。

ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」が東京・六本木の国立新美術館で開催されています。もうその展示タイトルからして行くしかねーだろ感がMAXだったので、迷わずに行ってきました。

すごい良い展示でした!

展示を見て回ったうえで感じた事をつらつらと書いていきたいと思います。

展示概要とその狙い

エントランス

本展覧会は、1989年から現在までの25年間に焦点をあて、複合的メディア表現として深化している日本のマンガ、アニメ、ゲームを総合的に展望し、私達の想像力と創造力を再発見する機会となることを目指します。

この展示で僕が真っ先に「おや?」と思ったのは、展示作品が、1989年以降に発表されたものに絞られているというところです。1989年といえば手塚治虫の没年ですから、これには明らかな意図を感じます。平成に生まれた作品だけで、日本のマンガアニメゲームを語ろうとしてる、ということなんでしょうか。

マンガ・アニメ・ゲームといったオタク文化を語る上ではどうしても外せなかったこの偉大なる人物を、敢えて根本から除外したコンセプトを持っているというところがまず驚きでした。

8章に分けられた分類テーマ

この展示は、膨大な数の作品を分類するために、大きく分けて以下の8つの章で構成されています。

第1章 現代のヒーロー&ヒロイン
第2章 テクノロジーが描く「リアリティー」―作品世界と視覚表現
第3章 ネット社会が生み出したもの
第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲーム
第5章 キャラクターが生きる=「世界」
第6章 交差する「日常」と「非日常」
第7章 現実とのリンク
第8章 作り手の「手業」

章タイトルを見てもらうと分かると思いますが、基本的には「マンガの章」「アニメの章」「ゲームの章」というような分け方はされていません。※4章と6章を除く。

各章ごとに概念的テーマを設け、それを体現する作品をジャンル問わず展示するというスタイルで展示を行うことで、「マンガだからこう」「ゲームだからこう」というような見方ではなく、媒体や表現方法を超越した「その作品のオタク文化における立ち位置」にフォーカスが当てられています。

あなたの好きな作品は、どこに分類されていますか

第1章 現代のヒーロー&ヒロインナタリー様より画像を引用

本展示は全体を通して「どの章にどの作品が展示されているか」が非常に大事な要素だな、と感じました。

例えば第1章は現代のヒーロー&ヒロインというテーマですが、公式の説明文はこうです。

友情、正義の心、そして冒険・・・。第1章では展覧会のプロローグとして、1989年以降に誕生したヒーロー、ヒロインたちを紹介しつつ、マンガ、アニメ、ゲームが持ち続けてきた「王道」たる熱気あふれるテーマの作品を紹介します。

この文を読んだ人の頭にはまず「王道ってなんだっけ?」「なんでこの作品は、王道だと言えるのだろう?」というような疑問が浮かぶはずです。すると面白い事に「え?この作品って王道…なのか?」というような疑問がどんどん湧いてきます。

第一章で展示されている作品の中には、NARUTO名探偵コナンなど、まさに王道を感じるメジャーな作品もありますが、一方でFate/stay nightキルラキルといった少し(大衆的には)マイナーな作品が展示されてるのを見て「どのあたりを王道と見たんだろう…?」と考えるのが、楽しくなってきます。

それがこの展示の狙いであり、目的でもあると思うんですよ。
来場者の想像力と創造力を再発見する機会を与える」という展示の目的を、一章目から仕掛けてくるんですよ。上手いなぁ。面白いなぁ。

全作品の説明文が愛に溢れている

この展示を見て回る上で重要視してもらいたいのが「作品のキャプション(説明書き)」です。往々にしてこういう展示では(良し悪しは置いておいて)ウィキペディアからコピー&ペーストしたような淡白なものが多いんですが、本展示のキャプションは違いました。

「この作品はこういう物語で、こういうところが人気だったよ。こういうバックボーンで作られてて、こういう部分が魅力だよ」といったような感じで、確かにキュレーターはこの作品を理解しているなというようなものが多かったんですよね。

そう考えると、第2章テクノロジーが描く「リアリティー」―作品世界と視覚表現において、「バイオハザードHDリマスター「と「バイハザードリベレーションズ2」を隣り合わせで展示したり、「攻殻機動隊」や「イノセンス」と並べて「シドニアの騎士」を展示し、「キャラデザの試行錯誤」にフォーカスを当てるようなやり方に、納得ができるわけです。

そうこうするうちに、「何故この作品がこの章に?」という問いかけが、より深くなって楽しくなっていくわけです。

作品展示の順番すら面白い

第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲームナタリー様より画像を引用

第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲームでは、FFXIVとドラクエIXが対面で展示してありました。WiiUの展示でサンプルとしてあげられていたゲームは「スマブラforWiiU 」「マリオカートforWiiU」そして「スプラトゥーン」で、これらは全てドツボにハマったジャンルを再構成して解き放った歴史的作品です。この3つが並んでいるのを見て「わかってる…」と感動するわけです。僕キモいですね。

また、第5章 キャラクターが生きる=「世界」では、うたプリとアイドルマスターが対面で展示してあって「確かに似てる!」と気付いたり、初音ミクがどのブースよりも大きなスペースを使ってフィギュア一体とライブ映像のみを展示しているのを見て、「なんでコレで展示が成り立つんだよ」って感動したり、ラブプラスのとなりにはときメモがおいてあって…

あぁもう、面白い!なんて面白いんだこの展示は!

ジャーナリズムとしてのマンガ

第7章 現実とのリンクでは、一転して「マンガのみ」を扱っています。手塚治虫を意識的に排除しておきながら、マンガにはそれ用の章を用意する。憎いですねー。

そして、その説明文はこう。

マンガ、アニメ、ゲームは時に現実の社会から強く影響を受けた作品を生み出します。特に幾度かの震災は、強い影響を与えました。3つのジャンルのなかでもマンガは世相に素早く反応し、その時々に応じた多彩な題材を作品として描いてきました。働くこと、作ること、日本の伝統文化を継承すること・・・、90年代以降のマンガはこれまでに数多く描かれてきた学校や恋愛、スポーツといったテーマに加え、より多彩で、実社会との接点を持った題材の作品を生み出し続けています。

僕はそこまでガチなマンガ好きではありませんが、上記の文章に「あぁ、なるほど確かに」と思わされました。考えてみればマンガというのはその時代を反映したもので、そこには少なからずジャーナリズムとしての側面を持っているからです。

福島第一原発作業員が描く渾身の原発ルポルタージュ漫画「いちえふ」のとなりに、少女マンガ「好きっていいなよ。」が展示してある光景、面白く無いですか?

手塚治虫は、もういらない?

本展示で唯一、手塚治虫の名前を見ることができるのは、第8章 作り手の「手業」の最後の最後に展示されている「メトロポリス」ですが、これがまさにマンガ版でなく、彼が亡くなった後に製作されたアニメ版であるということが、何よりのメッセージでしょう。

特定の文化を語る上で、その歴史を振り返り、辿っていく事はもちろん素晴らしい事です。しかしだからといって、「火の鳥を読んでない」「未来少年コナンを見てない」「パックマンを遊んでない」みたいな人を避難し、「分かってない」と否定するコトは、もはや時代遅れなのかもそれません。

過去を手繰り寄せれば確かに学びは増える。けれど、現代の若者が楽しく消費している作品そのものにも、確かに歴代の名作を思わせる要素が存在し、それは確かに日本のオタク文化が積み上げてきた「今」を体現していると言えます。

日本の、しかも国立新美術館で今まさにこういう展示が行われることがそもそもエモいですし、それ以上に手塚治虫没後25年に焦点を当てていることに感謝したいです。おじさん達よ、たしかに火の鳥は面白いし手塚治虫は偉大ですが、あなたがたはモンスターハンターを遊びましたか?アイカツって知ってますか?

マンガ・アニメ・ゲームといったオタク文化を包括的に語る上では、手塚治虫はもう、必要ないのかもしれませんね。

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」は2015年6月24日(水)~8月31日(月) の期間で開催されています。
このブログを読んでくれているぐらいのマニアックさをもっているあなたなら、絶対に行くべき展示ですよ!

なお本展覧会は、9月19日から11月23日まで兵庫県立美術館にて巡回展も行われます。

ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展示作品リスト

ちなみに展覧会書籍が素晴らしい

ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989
本展示公式の展覧会書籍「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989」がとても良いです。「さやわか」さんや「氷川竜介」さんなどのコラムも乗っていたりして、380ページという尋常じゃないボリュームの書籍になっていて読み見応えバツグンなので、展示を見終わったら絶対に買いましょう。後から後悔します。

追記:なんとAmazonでも購入できるようです。物理的に展示にいけないような方々は、本だけでも購入することを、オススメしまっす!

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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