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インディーゲーム「Hob」で、美しき古代文明とスチームパンクな世界に浸る

テレビゲームの中で、僕たちは何を目的に冒険を続けるのでしょうか。お姫様を助けるため?世界を救うため?はたまた、自分自身を探すため?…なんにせよ、コントローラーを握り、画面に向かって長い旅を続けるためには、それ相応の動機と目的が必要です。それがないと、長い時間をかけてゲームなんて遊んでられない!笑

あらかじめ断っておくと、「Hob」というゲームはわりと退屈な作品です。誰かを助けるわけでもなく、何かを救うわけでもない。10時間前後という短いプレイ時間の中ですら、「僕はなんのために頑張っているんだっけ…?」と我に変える瞬間の多いこと多いこと。

けれども僕は、このゲームを人に勧めることができる。それは、たとえヒロイックなストーリーでプレイヤーを鼓舞するような作りになっていなかったとしても、ゲームの舞台が美しく、魅力に溢れたものであれば、十分時間を割くべき作品になり得る、ということを知っているから。

アクションアドベンチャー「Hob」

Hobは、アメリカの独立系ゲームディベロッパー「RunicGames」によって開発された、見下ろし型のアクションアドベンチャーゲーム。片腕が巨大なロボットアームになっている主人公のキャッチーさも去ることながら、鮮やかな色合いと強いデフォルメによってデザインされた世界が目を引く作品です。

現在はSteamと海外PSNにて配信中。

主人公は、見知らぬ小部屋で目覚める

幻想的な小部屋で目覚めた主人公は、自分が何者かもわからない。見知らぬロボットに導かれ外の世界へ飛び出ると、そこには、見渡す限りの緑と朽ち果てた古代文明たちが横たわっていた…。

広く、空気の層を確かに感じる表現力。

たまにロードが入るものの、基本的にはシームレスにつながる広い世界。命を助け、腕を授けてくれたロボットに言われるがままに古代文明の仕掛けを解放・起動し、世界のあるべき姿を取り戻していきます。プレイ感はゼルダの伝説、テンションはワンダの巨像に近い感じ。かなり好きなタイプのゲームです。

「画面映え」するビジュアルに圧倒される

Hobの魅力はなんといっても、その自然とテクノロジーの融合を美しく表現したビジュアルに他なりません。赤い頭巾と巨大なロボットアームという男のロマンを体現したかのような主人公を筆頭に、変化が豊かなマップ、艶かしくグロテスクなモンスターなどに出会う楽しさ。発見と驚き、感嘆に満ちた冒険。

カメラアングルのセンスが抜群に良い。

「あー…良い!(パシャッ)」と、事あるごとにデュアルショックのシェアボタンを押し込んでスクリーンショットを撮影してしまう。おそらく、開発者側もそれを意図していたんでしょう、カメラアングルが固定され、景色をフィーチャーするようなポイントがいくつも存在しているではないか!ありがとう。ありがとう。

カメラがグッと引き、「スクショ映え」するポイントも

ラピュタっぽい近未来感

草木がまとわりつき、朽ち果てているにも関わらず、鈍く光って稼働する機械。映画「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせる世界観に、男のロマンが…止まらない!

青白く光るスチームパンク風のテクノロジー

仕掛けを解くと作動する大仕掛けの地形たち。そのスケールに圧倒され、またその美しさに感動させられる。ほんと、こんなにも思わず動画をキャプチャーしちゃうようなゲームって、なかなかないですよ。

地面からせり上がってくる地形。興奮が止まない

要所で流れる音楽以外は、基本的に環境音と効果音のみで構成されるこのゲーム。イヤホンをつけてじっくり没頭するのをお勧めします。

青白く光る未知の物体にゾクゾク

どこまで語らないか、が大事

ビジュアルが魅力的な反面、ゲーム全体にモチベーションを喚起させる工夫がなく、始まりから終わりまでいまいち盛り上がりに欠けるゲームでした。本作は、テキストを一切使わないノンバーバルゲームの一種ですがその特性(プレイヤーへ与える情報を制限することで、逆に想像の余地を与える)が、上手く使えてなかったように思います。減らせば良いってものでもないのよ。

様々な景色の中を駆け巡る

確かに、収集要素によってその片鱗を想像させるギミックは用意してあります。が、何も考えずにプレイしていると、話の本筋がよくわからないままゲームが終わってしまいました。プレイを止めてしまうほどではないにせよ、なまじ雰囲気ゲーのごとく景色が美しいので、多くを語らずプレイヤーをモチベートさせていたICOや風ノ旅人との差を感じざるを得なかったです。惜しいなぁ。

戦闘要素はおまけみたいなもの

ちなみに、本作におけるモンスターとの戦闘は、あくまでオマケ程度。いや、もはや邪魔だとも言えるレベルかもしれません。

なぜ襲ってくるのかいまいちわからないモンスターたち

攻撃を避けて、近づいて切る。この繰り返して大抵のモンスターは倒せる奥の浅さなのにも関わらず、的の攻撃力はなぜか超高い。せっかくロボットアームというキャッチーなアイコンがあるにもかかわらず、剣という武器を別途主人公に与えているのは、ゲームの洗練さを欠いていると思いました。戦闘も謎解きも、すべてロボットアームで行うべきだったんじゃないですかね。

敵から集めた結晶を使用して、つかえるアクションを増やしていける。

世界を探索し、秘境を愛でるゲーム

値段が安く、プレイ時間も短く収まるインディゲームとしての満足度は、総じて高めでした。コンパクトに収まったボリュームの中で、秀逸なアートワークによって構築された美しい世界を探索する楽しさが確かにある。説明不足なストーリーと、退屈な戦闘を我慢できる人であれば、ロマンにあふれた古代文明を愛でるように楽しむことができるゲームになるでしょう!

Hob

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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