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映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」は、なんでこんなに酷評なんですか!マンガの映画化はこうあるべきでしょう!

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進撃の巨人 ATTACK ON TITAN。
見る前から、ネット上の酷評は目に入ってきていましたが、原作ファンであり樋口監督ファンであり、マンガ原作映画の出来栄えが気になる症候群持ちの僕としては、なるべく自分の目で観て判断したかったので、ネタバレを避けつつ半分賭けみたいなテンションで観てきました。

え?面白いんだけど

進撃の巨人は2014年8月の時点で単行本の売上が累計4000万部を突破しているというモンスター漫画。アクション、ストーリー、人間ドラマ、キャラクター、あらゆる方面から色んなファンを抱え持つ、どうあがいても批判は免れなそうなこの曲者ですが、監督を務めるのは樋口真司
ゴジラ、ガメラなどの特撮もの、そしてローレライ、日本沈没などの邦画アクションもの、そしてナディアやエヴァなどにも参加している彼による実写化なので、当然その人選に「これは…、期待できる!」と思った人も多いんじゃないでしょうか。あれ、多くない?

100年以上前、人間を捕食する巨人が現れ、人類のほとんどが食べられてしまった。生き残った者たちは巨人の侵攻を阻止すべく巨大な壁を3重に作り上げ、壁の内側で暮らしていた。エレン(三浦春馬)やミカサ(水原希子)もそんな中の一人だった。そんなある日、100年壊されなかった壁が巨人によって破壊されてしまう。

あらすじこそマンガに添ってますが、登場人物、物語は原作から大幅に変更されています。その変更具合が気に入らない所謂「原作厨」の中身無き批判をなるべく目に耳に入れずに1回目を観てきましたが、なんだ、全然面白いじゃないですか!

迫り来る巨人の怖さ、そして主人公エレンに突きつけられる残酷なシチュエーション、そして最後のカタルシス解放…!見終わった後ふつうにテンションが上がっている自分がいました。なんで、世間ではこんなに酷評なんですかね。確かに「最高!文句無し!」とまではいきませんが、酷評ってのはおかしくないですか?気になったので、遮断していたネット上の感想分を読みあさってみたのですが、それで大体この映画の構造と、見た人が感じる印象が分かってきました。

悪いところがわかりやすい、ただし良いところがツボると良作に転じる

ハンジ・石原さとみ
この映画は、良いところと悪いところがとてもわかりやすいです。だから、悪いところが気にならず、良いところがツボっちゃった人は楽しめて、その逆の人が「酷評」しているんでしょう。「悪いところ」を見つけるほうが簡単だし、コメントもし易いですから。

ちなみに、僕はといえば完全に前者で、「良いところ」がツボってしまって、「悪いところ」があんまり気になりませんでした。これほど酷評されている映画を褒めると「わかってない」だとか「ステマ」だとかって言われるかもしれませんが、それでも僕はこの映画を褒めたい!だって、良いところが本当に良いんだもん!

特撮的エッセンスに”じゅるり”

今回の実写化、樋口監督による特撮メソッドで、「迫り来る巨人の不気味な怖さ」がとても良く出てます。序盤に登場する「超大型巨人」の低音ゴリゴリのウソっぽい足音(褒めてます)や、大きな怪物を下から見上げつつ、大きすぎて動きがゆっくりになってる感じとか、まさに特撮っぽくて好きでした。
人を食べる巨人

中型巨人に関しても、わざと見た目をギャグっぽくしつつ、殺戮シーンをかなりグロテスクに描くことで、「笑っちゃいそうなぐらい見た目が間抜けなんだけど、ぎりぎりのラインで不気味で怖い」という原作の巨人の感じを上手く出せてると思うんですよね。序盤30分間ぐらいで完全に持ってかれました。
アクションシーンや、殺戮シーンは全体的にウルトラマン的であり、ゴジラ的であり、エヴァ的でした。そういうのが好きな人にとっては、至る所に「好きポイント」が見つかると思います。

あと水原希子のミカサ、そして石原さとみのハンジは必見ですよ。マジでハマってます。

よくぞここまで改変してくれた

キャラクター達
原作からかなり変更が加えられているところも好きでした。個人的ですが、漫画を実写化するなら、もっと言うなら実写ではない作品を実写化する場合、映画やドラマに限らず、原作をどんどん改変するべきだと思うんですよね。

原作には原作の良さがあるし、媒体が違えば表現や温度感も変わってくるので、それをそのまま実写映画に持ってきても滑稽になるだけ。たまに原作を完全に再現しようとしている映画があったりしますが(逆転裁判…)、それこそ「原作で良い」わけで、映画にするなら映画用に、しっかり変えて欲しいと常々思ってます。

原作と近しいものを期待したファンが「期待はずれ」と評価するのもわかりますが、そもそも原作と同じであることを映画に求めるのはちょっとナンセンスなんじゃないかなぁ。

どこを残すべきか

たとえば、同時期に公開されている園子温監督の「リアル鬼ごっこ」は、山田悠介の同名小説を原作だと公言しながらも、内容が完全に別物だということで物議を醸しています。原作と変えるどころか、まったく別物。これじゃ「リアル鬼ごっこ」という同名タイトルを使う意味が無いですし、ましてや山田悠介の「リアル鬼ごっこ」を原作といい放つ神経が理解できない。(いや、園子温監督は好きですけどね)

またまた個人的ですが、別媒体の原作を映画化するなら、「原作とは変えるべき、しかし、原作は大事にすべき」だというのが僕の考えです。これは、言い換えれば「原作を原作たら占めている要素をしっかり抽出し、それ以外は映画用に全部作り替えるべき」という意味になります。

進撃の巨人とは

迫る巨人
進撃の巨人という漫画は、何をもって進撃の巨人なんでしょうか。進撃の巨人の魅力とは、「物語」なのか「キャラクター」なのか、はたまたそれ以外の「何か」なのか、その答えは人によって千差万別で、明確な答えはありません。

ですが重要なのは、監督が「進撃の巨人のどこを抽出するか」ということ。

原作にある要素を全部抽出して映画をつくるのがベストだとは思いません。それは読者によってマチマチだから、全部網羅しようとすると尖りのないものになるし、そもそも漫画でいいじゃんってなるし、そういう映画化は得てして滑稽な出来栄えになりがち。

その点、この映画は「巨人がしっかり怖い」「エレンがしっかり主人公」この2点を守ろうとしたんだと僕は思いました。キャラクターは変わってるし、物語も変わってるし、立体機動のシーンは少ないし。2時間という限られた時間で要素を絞って、そのために全体を構築する。このやり方が僕は大好きです。

まぁ、それと映画の出来栄え、はまた違った話になってきますけど。笑

気になったところ

エレン・ミカサ・アルミン
まず色んなところで指摘されてますが、脚本は褒められたものではありません。全編にわたって大げさな仕草と不自然なセリフのオンパレードで、「言いたいことは分かるけど…、ちょっと露骨すぎるだろそれ」と思ってしまうことがシバシバ。別に演技が下手な俳優さん達では無いと思うんですけどね。

あと、シーン単位の見せ方や技術はとても良いんですが、シーン同士の繋がりが下手くそだなぁと感じました。「うぉ、巨人怖い!(けど、これ自業自得じゃね?)」とか「うぉ、エレンかっけえ!(けど、さっきのアレはねーだろ)」みたいなのが多い。これは、監督が特撮あがりなのも理由かもしれません。素直に特技監督にとどまっていたほうが良かったのかも。

とにかく、自分の目で確かめるべき

事前に、「面白くない」という感想を大量に仕入れてしまうと、どうしても色んなシーンがマイナスに見えてきてしまうものです。それは本当に残念なコト。確かに酷評の荒らしですが、どう見ても良いところはあるし、ツボる人にはツボる映画になっているハズ。
原作からの大幅な変更。それはすごい勇気が必要な決断だっただろうし、ファンに媚びずにしっかり変えてきてくれたこと自体も僕は評価したい。

とはいえ、「初見の人も原作ファンもみんなが楽しめる映画化」がベストだと思うので、その点でもやはりこの映画は「ベスト」では無いですね。笑

進撃の巨人が好きな人、原作は知らないけど興味がある人は、是非自分の目で確かめてみて欲しいです。1800円払う価値はあると思います。

公式ウェブサイト

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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