マンガ×バンドデシネ!フランスから逆輸入されたマンガ「LAST MAN」がめちゃ面白い!
本日も超ゲームウォーカーをお読みいただきありがとうございます。コウノ アスヤ(@asuyakono)です。
先日、渋谷TSUTAYAのマンガコーナーをぶらーっとしていたら、無限に平積みされた数多のマンガの中から、やけに目につく表紙のマンガを発見してしまい、めずらしく表紙買いをしてしまいました。
LAST MAN(ラストマン)というマンガなのですが、これ実はフランス人が書いた、いわゆるバンド・デシネなのです。しかし、にもかかわらず日本のマンガ的な絵作りとコマ割りのテンポが採用されていて、めちゃくちゃ読みやすい。いや、読みやすいどころかマンガとバンドデシネのいいとこ取りのような見事な作品になっていて「そりゃ表紙だけで魅了されるわ」といわざるをえない素晴らしい作品でした。
LAST MAN(ラストマン)
LAST MANは、「バスティアン・ヴィヴェス」「バラック」「ミカエル・サンラヴィル」というフランス人の作家3人による合作のバンド・デシネ。3人で描いている、というところが珍しいですね。日本でいうCLAMP的な感じでしょうか。
「バンド・デシネ」とは、聞きなれない言葉ですがメチャクチャ乱暴にいうと「フランス語圏における漫画」のこと。日本の「マンガ」に比べると比較的「1コマ1コマが絵画的な1枚絵のよう」であり、日本のマンガが1コマの中で時間の流れがあるのに対して、バンド・デシネは瞬間を切り取ったようなコマが続くのが特徴です。フランスではバンド・デシネは芸術として認められていて、批評や研究の対象にもなっているほど。
そんなバンド・デシネな国であるフランスの作家が日本のマンガに影響をうけ、その表現技法や文法を参考にして作られたのが「LAST MAN」ということになります。もうこれ、成り立ちから日本とフランスがタッグを組んでいるようでメッチャ胸熱ですわ。
あらすじ
とある辺境の谷にある王国「王家の谷」
そこで、母親と暮らす少年アドリアンは武道学校のおちこぼれ生徒ですが、毎年国をあげて行われる武道トーナメントに、今年も参加することになります。
しかしこの大会、実は二人一組で参加というルールで、にもかかわらずアドリアンはパートナーの欠場によって参加できなくなってしまいます
そんな時、突如ガチムチでワイルドで屈強な旅人「リシャール・アルダナ」が登場し、タッグを組んで参加することに。謎の多い男アルダナとともに、アドリアンはトーナメント優勝を目指します。
このあたり、映画「リアル・スティール」を思い出したりしました。初めはただ利害関係が一致していただけの関係が次第に真の師弟関係に…。
この物語の骨組みは、言うなれば「ボーイ・ミーツ・アダルト」。幼くて純粋で内向きな少年アドリアンが、様々な大人に出会いながら心身ともに成長していくストーリーです。精霊の力を使役したいわゆる「バトルもの」かと思いきや、2巻あたりから、ロードムービーっぽくなったり、3巻からまたバトルっぽくなったりと、なんともジャンル分けしづらい作品でもあります。
独特な絵作り
LASTMANの魅力は、なんといってもこの絵作り。
集中線やトーンなど、日本のマンガで特徴的な表現技法を極力使わずに線の強弱をメインとした絵柄は、どこか芸術チックで、ペンという道具の力強さを感じます。こんなに少ない線で、躍動的で温かみのある世界を表現できるのは素直にすごいですね。昨今のマンガやアニメは、なんだか似通ったルックスが多いものだから、より一層、このオリジナリティあふれる絵柄にかなり引き込まれます。もとが横書き文字なので、ページ送りが逆なのもなんだか新鮮。
個人的に、主人公のアドリアンと、その母マリアンヌの衣装が青いコートなのがとても良い。ナウシカみを感じる。
アダルト性のあるストーリーテリング
先ほど「ボーイ・ミーツ・アダルト」と表現した本作のストーリー、いわゆる少年マンガ的な世界観をもつ冒険譚でありながら、日本の少年マンガらしからぬ「アダルトな表現」も多々でてきます。
主人公の美人な母親が、男と寝るシーンを目撃したり、純粋無垢な少年が、大人の女性を妖艶な姿をみて少し(下半身的に)ドキりとしたり。その絶妙な欧風の感性もまた、ラストマンの魅力です。ていうか主人公の母親が色気ありすぎ&かっこよすぎ&美人すぎでもうね。最高だわ。
どんどん広がっていく世界
LAST MANは巻数を追っていく事にどんどん世界が広がっていきます。小さな辺境の村、不思議な谷、港町、発展した都市…。舞台だけではなく物語もめまぐるしく変わっていくので、飽きが来ない。
作者によって「12巻で完結する」ことが発表されているこの作品。この記事を書いている時点では、本国では9巻まで、日本では4巻まで刊行されていますが、この先どんな風に物語が加速していくのか気になって仕方がない。
巻末のインタビューも面白い!
日本語版の単行本には、毎巻松に作者お三方のインタビューや制作日記が掲載されています。
これが、めちゃくちゃ良い。なぜこういうマンガを描こうと思ったのか、日本のマンガのどういう部分に影響を受けたのかなど、作品をより深ぼって理解できるような内容になっています。ただでさえ海の向こうにいて、検索しても作者の情報はまだまだ多くないので、こういう形で読者と作者を繋げてくれる仕組みは、とても嬉しいですね。
また、Youtubeで動画でのインタビューも公開されてます。3人には是非ともこれからも素敵なマンガを作っていってほしい。
飛鳥新社さん、ありがとう!(歓喜)
飛鳥新社によるユーロ圏のマンガ翻訳&出版プロジェクトである「EURO MANGA」によって日本刊行がなされた本作(マジで良い企画!)。「最近のマンガってどこか似通ってんだよなぁ」とマンネリを感じている方、「とにかくユニークでおしゃれなマンガが読みたい」と思っている方、そんな人たちにオススメです。僕はもうドハマりしてしまったので、最終巻が日本で刊行されるまで、ファンとして追いかけ続けることでしょう!
ちなみに、同じくEURO MANGAにRADIANT(ラディアン)というマンガがあるのですが、これも面白いので同じくオススメですよ!