超ゲームウォーカー!

search

人は、わからないから怖いのだ。PS4「INSIDE」は僕らの内側に恐怖を生み出す

本日も超ゲームウォーカーにお越し下さりありがとうございます。コウノ アスヤ(です。

去る2016年、世界中の名だたるゲームアワードで賞を獲得しまくった海外のインディーゲームがあります。「INSIDE」というタイトルで昨年6月に発売されたそのゲームは、極めてシンプルなゲームシステムながらエグい程のホラー性と精神的グロテスクを与えてくる名作として、インディゲームの歴史と僕の心に強く刻み込まれました。

INSIDE(インサイド)

INSIDEは、デンマークのインディーゲームディべロッパー「Playdead」によって作られた横スクロールアクションのホラーゲーム。デフォルメされながらも光の具合や陰影がリアリスティックに表現された、研究所のようなステージを、右へ右へ進んでいきます。

「移動」「ジャンプ」「ものを掴む」という3アクションだけというシンプルさ

遊び始めてすぐにわかるのは、このゲームには情報がなさすぎるということ。主人公の名前は無いし、なんなら顔だって見えない。服装だってあまりに普通。ストーリーは言葉で語られないどころか、なんの説明もないまま続く。ミニマルで、シンプルで、徹底的に余分な贅肉を削ぎ落としたゲーム。そこに残るのはただだた気持ち悪いという感情でした。

ミニマルの先にある「怖さ」

INSIDEは、遊んでると何度も何度も「うわ、気持ち悪い…」と感じる場面に出くわします。なにかが背景で死んでいる、よくわからない生き物がうごめいている、謎の人達が悪意をもって襲ってくる。挙げ句の果てには、常軌を逸した、人の倫理観さえも裏切った光景を目にした時、怖いという感情を通り越して、「本当に気持ちが悪いな」と感じます。

「なぜこの人たちは、僕を捕まえようとするんだ」その答えは誰も教えてくれない

それだけではありません。遊んでいると、ことあるごとに「なんか嫌だなこれ」「怖いな」「寂しいな」「悲しいな」「辛いな」あらゆるネガティブな感情が湧き上がるのを感じて、このゲームはなんなんだと、感動を覚えました。

よくあるホラーゲームの趣向からは逸脱している

ホラーゲームと聞くと、思い浮かぶのはグロテスクな表現だったりビックリする演出だったりしますよね。零などの和製ホラーゲームのほうが比較的不気味さを上手に使えている印象ですが、それでもやっぱり血とか幽霊みたいな視覚表現で怖がらせてくることが多いです。しかし、INSIDEではそのような露骨な視覚表現はほとんど出てきません。そもそも画面が暗くて彩度も低いので血もクソも無いですし、キャラクターがアップになることもない。けれど、暗闇の中でうごめく小さな生き物の不気味さ、水の中で執拗に追ってくる髪の長い人間っぽい何か、そういう存在がただ怖くて、気持ち悪い。

得体のしれない「何か」に遭遇するたびに、「恐怖」と「興味」が揺れ動く

一切のポジティブを排したゲームデザイン

INSIDEにはポジティブな場面が一切登場しません。世界はずっと暗いままで日が当たることは無いし、いたるところで何かが死んでいるし、なんども襲われる。障害物を乗り越えても、敵から逃げ切っても、誰かに、システムに効果音などで褒めてもらえるようなことも無い。「やった!」という感情よりも先に、「はぁ、なんとか逃げ切った…嫌すぎる」みたいな気持ちが先に来ます。こんなゲーム、本当に遊んだことないです。

じゃあ何故このゲームを遊ぶのか

こんなにネガティブな感情ばかり沸き起こって、プレイをやめたくなるんじゃないかと気になるかと思いますが。以外とそんなことはない。なぜならこのゲームは一貫して、「なにも語られない」ことで、プレイヤーの疑問と興味を常に喚起し続けるからです。

理解が追いつかない環境に身を置くことになったら、あなたは先に進みますか

人間は「わからないもの」を恐れ、それに名前をつけたり意味を見出したりして怖さをしのぐ。それは、都市伝説や怪談が如実に表しています。わからないほうが怖い。そういった心理からか、INSIDEではひたすら、「ここはどこなんだ…」「あいつらは何者なんだ」「なんで、襲われるんだ!」「なんの実験なんだよぉ!」と、わけのわからないこと尽くしで、プレイの手を止めることができません。もちろん、ひたすら右に向かうだけ、というシンプルなゲーム性も加味しているでしょう。謎解き要素もいい塩梅で、すすめるのが面倒になることもありません。

ゲームでしか表現できない「内側」に生まれる恐怖

ゲームは能動的な娯楽です。見てるだけ、めくるだけで登場人物が先に進む映画やマンガなどと違い、自らの意思で前へ進まないと作品時間が進まない世界です。気軽に楽しめるというメリットが損なわれる反面、「怖さ」や「興味」といった感情にダイレクトに訴えかけてくるメリットがあります。なんだこれ!と「不安」を感じるのも、それが怖いから先へ進む「興味」も、「恐怖」もぜんぶ自分の内側「INSIDE」にあります。。だからこそ、このゲームの「怖さ」というのはとても深くて、他のあらゆるネガティブな感情も、自分ごととして貴重なものになる気がしています。

クリアした後ですら達成感を味わえずに、絶妙な後味をつくり出している奇跡の名作。ぜひINSIDEで「ホラーってすごい」と感じてください。PS4をもってるなら、この夏絶対に遊ぶべき!

INSIDE (PSN)

この記事をSNSにシェア

feedly Feedlyで購読

この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

アクセスランキング