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ため息が出るほどパーフェクト─ハクスラ×メトロイドヴァニアな「スチームワールドディグ2」をレビュー

本当に面白いゲームとは「気が付いたら数十時間も遊んでいた…」というようなゲームではないかと思う。スチームワールドディグ2は、クリアまで10時間もかからないようなコンパクトなゲームではあるものの、その秀逸なゲームデザインによって、それがまさに一瞬に感じられるほどの没入感をもたらすパーフェクトなゲームだ。

スチームワールドディグ2

スチームワールドディグ2は、Image&Form Gamesによる開発、フライハイワークスから発売されている2D横スクロールアクションゲーム。いわゆるメトロイドヴァニア的ゲームではあるが、西部劇×スチームパンクというユニークな世界観と、ミスタードリラーよろしくブロック状の地下ステージを下に横に掘り進めていくゲーム性には確固たるオリジナリティがある。

もともと2013年に3DS向けに発売された前作スチームワールドディグは、その秀逸なゲームデザインとアートワークで多くのプレイヤーから高評価を獲得。地味に複数の賞も受賞しており、その後PCやPS4/Vita向けにも移植されている。本作はその続編である。

主人公のドロシーと、相棒(?)のフェン

主人公のスチームボット「ドロシー」は、行方不明になった前作の主人公「ラスティ」を探すため、また、頻繁に起こるようになった地震の謎を解き明かすため、ツルハシを片手に、地下迷宮を掘削しながら冒険を繰り広げる。

ところで前作では単なるモブキャラだったドロシーが、2で主人公に格上げされるとは誰が予想しただろうか。今回はお前か!と、1人で動悸が高まったことは余談である。

すべては無駄のないゲームデザインから

本作の良さをあえて一言で言ってしまうとすれば、「無駄のないゲームデザインで、各要素の合算以上の面白さを実現している」というところだろう。キャラクターが繰り出すアクションはヌルヌルと快適に動き、プレイヤーのスキルやプレイスタイルを見事に反映するハクスラ要素と、それらを許容し楽しい遊びを提供するレベルデザインは非常にバランスのとれた設計。なにもかもが高水準にまとめ上げられた、非常に稀有で高品質なゲームであることは間違いない。

掘ったブロックは復活しない。だからこそ面白い

ツルハシを片手にブロック状の地面を掘り進んでいく本作。モンスターや障害物が待ち構えていたり、キャラクターの強化に必要な鉱石が埋まっているブロックがあったりするので、プレイヤーはそれを求めて寄り道したり、逆に回り道したりしながら進んでいくことになる。マーカーが指し示す方向に適当に掘り進めてもゴールに到達できる作りになっているので、難易度はそれほど高くないだろう。しかし、掘ったブロックは基本的に復活しないので、プレイヤーは徐々に「鉱石回収に無駄のない掘削ルート」を狙いはじめたり、「引き返し難い掘り方は避ける」ようになる。

モンスターを倒しまくって経験値を稼ぎたいプレイヤーにはそれ相応のリスクが伴い、安全重視なルートで進め続けると経験値や鉱石はなかなか手に入らない。プレイヤーが「考え」てプレイし、その結果がしっかりと現れるゲームデザインのおかげで、駆け引きに対してどんどん上手にプレイできるようになっていく成長感を味わうことができる。

バリエーションに富んだ本作の地下迷宮。ステージのギミックも変わってくる

シンプルな洞窟風のマップの他にも、毒々しい森やマグマがひしめく神殿など、いくつかのバリエーションがあるおかげで、視覚的にもギミック的にも、ゲームプレイから単調さを排除している点も見逃せない。

横穴がいいアクセントになっている

広大な地下迷宮の中には、さらに横穴が隠れている。それぞれの洞窟は独立していて、その中にはゼルダの伝説ブレスオブザワイルドの祠よろしく、コンパクトな謎解き要素が用意してある。黙々と掘り進める冒険の脇道にこういったアクセントがあると、長い旅にも飽きがこないし、洞窟をクリアすると身体機能の強化に利用できる「ギア」がもらえるので、一石二鳥だ。

謎解きの褒美として「ギア」が入手できる横穴

この横穴、「探索→発見→謎解き→ご褒美→強化」という見事な設計で、洞窟を見つけると思わず寄り道してしまうというものだ(ギアを手に入れた横穴にはチェックマークがつく新設さも個人的なポイントが高い)。

絶妙なバランスのハクスラ要素

本作では、一度に収集できる鉱石の数に限りがあったり、辺りを照らしてくれるランプが時間経過によって消えてしまうシステムになっている。これでは鉱石が無駄になったり、探索に不利な状況になってしまうため、プレイヤーはエル・マキーノという町を拠点に何度も繰り返し地下に潜ることになる。プレイヤーは広大な地下迷宮の各所に点在する「チューブ」によってエル・マキーノに戻ることができるが、この分布率もまた絶妙なため、「引き返すか?」「進むか?」の2択を常に迫られる。もちろん、死ぬと集めた鉱石はすべてパーだ。

個性豊かなキャラクターたちが住む、拠点の町エル・マキーノ

地下迷宮に点在する「ステーション」によって、ゲーム進行に必要な身体機能が強化される他、集めた鉱石を売却して得られる資金や、マップ内に隠された「アーティファクト」、横穴をクリアして手に入る「ギア」によって身体機能をさらに強化できるため、「潜る→掘り進める→集めたアイテムでキャラクターを強化する→潜る」というサイクルが止まらなくなってしまう。ハクスラ万歳。

キャラクターの強化には、お金を消費してツルハシなどのメイン装備をパワーアップする「アイテムアップグレード」の他、「ギア」を使って自由にスキルをカスタマイズする「ギアアビリティ」がある。ギアアビリティは、「経験値UP」や「鉱石吸い寄せ」といった様々なスキルをいつでも好きに付け替えられるので、苦手を克服したり、得意を生かしたりするなど、プレイスタイルによって多用な攻略法を見出せる作りだ。

「ギアアビリティ」で機能を自由にカスタマイズできる

そして、鉱石を売却する際の代金は、ゲームの進行とレベルに合わせて追加ボーナスが上乗せされていくので、終盤になるにつれて失速するということも無い。非常に快適に、ゲーム進行とプレイヤーのスキル上昇に合わせてキャラクターが強くなっていく。ため息が出るバランスである。

ちなみに、エル・マキーノに住む住民たちはゲームの進行度合いによって語るセリフが変わっていく。ぜひ何度も話しかけてみてほしい。

ストーリーは無いに等しいが、必要最低限

本作には一応「ラスティを探す!」「地震の原因を探る!」というストーリーは存在しているが、実際のところ無くても問題無いレベルに薄い。プレイを進めるためのモチベーションのために用意してある印象ではあるが、正直なところゲーム部分が楽しすぎてストーリーが割とどうでもよくなってきてしまう。とはいえ、最後は(いい意味で)すこし驚きの展開が待っており、ゲームの幕引きとしては申し分なかった。

Nintendo Switchのベストバイゲーム

バランスの取れた完璧なゲームデザインであまりに楽しかったので、クリアまでの数時間が一瞬で過ぎ去ってしまった。独特のアートワークや淡白なストーリーは人を選ぶかもしれないが、少なくとも「メトロイドヴァニア」「ハクスラ」といったワードにピンとくるゲーマーにはほぼ100%刺さるゲームだと思うので、是非一度プレイしていただきたいゲームである。

スチームワールドディグ2は現在SteamとNintendo Switch向けに発売中。

スチームワールドディグ2

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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