ステルスゲームをスマホで成立させた脅威のゲームデザイン「République」をレビュー!PS4版はイマイチ…
こんにちは!コウノ アスヤ(@asuyakono)です。
「ステルスゲームの金字塔といえば?」
そう聞かれてどう答えるかは人によって様々だとは思いますが、日本人なら「メタルギアソリッドシリーズ」だと答える人が多いんじゃないでしょうか。今でこそ「隠れながら進むゲーム」は多く存在していますが、その礎を気付いたのはやはり、1987年にMSX2用に発売された「初代メタルギア」でしょう。
そして、そんな数多のステルスゲームの系譜をたどりながらも、スマートフォンという難しいデバイスで新たなゲーム性を生み出しているのが、今回レビューする「République(リパブリック)」です。
スマホ×ステルスゲーム、そんなことが可能なのか?遊ぶ前は疑ってかかっていました。
République
全体主義国家メタモルフォーゼ。この国では国民がネットワークによって監視・管理されている。この国に住む女性・ホープは見てはならないものを見てしまったため、危険人物として幽閉されてしまう。このままでは洗脳されてしまうことに危機感を覚えたホープは監視員の隙を突いて携帯電話を盗み出し、助けを求める。プレイヤーであるあなたは、ホープからのメッセージを偶然受け取り、彼女をハッキングにより助けることを決意する。
「メタルギアソリッド4」や「Halo4」の開発に携わった後に、独立スタジオ「Camouflaj」(カモフラージュ)を立ち上げたライアン・ペイトンというゲームデザイナーよって制作されたのが、このRépublique(リパブリック)。企画開発段階に、クラウドファンディングで55万$もの資金を調達したことが話題になっていたのが記憶に新しいですね。55万$って、だいたい6000万円くらいでしょうか…すげぇな。
ゲーム自体は章構成になっていて、スマホ版は章ごとに購入、据え置き版は全5章がパックになっています。
スマートフォンネイティブな、ステルスゲーム
2016年7月時点において、このゲームは「スマートフォン版」と「据え置き機版」が存在しますが、まず本作を語るには、オリジナルであるスマートフォン版について言及しないといけません。
本作においてプレイヤーは、主人公である女性ホープを直接操作することはできません。プレイヤーは、その世界に自分のスマホから接続した「監視者・助力者」となって、監視カメラを飛び移ったり、IT機器をハックしながらプレイを進めていくというメタ的な世界観、ゲームシステムになっています。彼女はプレイヤーを「あなた」と呼んでプレイヤーの指示通り動くので、まるで自分自身がその世界の一員になったかのように感じました。これが、このゲームがステルス”アドベンチャー”ゲームと呼ばれている所以です。アクションゲームではないのです。
スマホというデバイスを逆に生かしたゲームデザイン
物理的なボタンを持たず、フィードバックに乏しいスマートフォンのゲームは複雑な操作を要求できず、没入感が弱いものが多いですが、本作はこの「スマートフォン=世界の窓」という構造によってそれを逆手に取っているところがすごいです。画面の中にいるホープという女の子を直接操作することができず、助けたいのに電子機器を通じてしか手助けすることしかできないというジレンマ。
複雑な操作を要求できないのであれば、むしろ要求することなく、それによってよりプレイヤーの没入度を上げていくという手法。さすがとしか言いようがない!
サイバーパンク×ステルス
IT機器をハックするゲームといえば、最近だとWATCH DOGSなどが記憶に新しいですが、本作は見事に、いわゆる「メタルギア的なステルス要素」と「ウォッチドッグス的なサーバーパンク感」をミックスすることに成功しています。IT技術が発展した全体主義的な監視国家、こちらの世界と突如つながったスマートフォン、なぜか様々なIT機器をハックし操れるプレイヤー…。脳汁があふれ出ます。助けるべき主人公が女の子で非力であるというのも、また上手いなぁと感じました。
ストーリーテリングは今ひとつ
世界観設定やメタ的なプレイヤーの介入のさせ方など、ゲームデザインはすごい良かったんですが、肝心のストーリーに関しては、少し不満を感じました。複雑な設定の舞台なのにもかかわらず、導入や説明がほとんどされず、すべての登場人物がわかったような口で専門用語を話し続けてプレイヤーは置いてけぼり。その溝を埋めるための IPSが随所に散りばめらているんですが、物体に録音された音声データとして収録されているので、全部聞くのがとても面倒くさい。せめてテキストで用意してくれればまだマシでした。(このアイデア自体は監視国家っぽくてとてもよかったですが)
また、ゲーム全体がつ5つの章で分けられているんですが、各章ごとの物語的な盛り上がりと、次の章へのひきがかなり弱かったです。次が気にならないから、続けるモチベーションが高まらない。その点でいうと、分割構成だったLife Is Strangeは、そこが相当上手かったんだなぁと改めて感じました。
PS4版は、逆に操作が自由化(複雑化)
満を持してグラフィックやシステムがアップコンバートされた据え置き版ですが、個人的にはこれは失敗だったと思っています。ボタン操作になり、ホープを自分を動かせるようになったことによって、全体的に複雑化して逆にシンプルさがなくってしまっていました。ホープを動かして敵兵から隠れつつ、スティックで監視カメラを動かしつつ次のカメラにボタンでジャンプするという、非常にストレスの溜まるゲームデザインに。自分はカメラとIT機器の操作だけ、ホープには画面タップで指示を出す、というスマホ版のバランスがいかに優れていたのかを感じました。
なぞのローディング多数
あと、スマホ版ではあまり感じられなかった画面切り替え時のロードが、PS4版だとかなり長く感じられました。時には「え、フリーズしたかな!?」と思ってしまうほど長いことも…。これはよろしくない´д` ;
スマホ版、据え置き版どちらがオススメか
スマートフォン×ステルスゲームという立ち位置だったスマホ版は、スマホでよくここまでやったな!これは最高のスマホゲーだ!という印象でしたが、据え置き版になってしまうと「なんか中途半端なステルスゲーだな…」と感じてしまいました。それはおそらく、スマホ版の方が世界観とゲームシステム、そしてデバイスの特性が見事に合わさっていたからであり、一度据え置きに移植されてしまうと、中途半端で物足りないものに感じてしまったからだと思います。
ゲームとしての完成度は圧倒的にスマホ版に軍配が上がりますが、スマホ版は英語版しかなく、ただでさえ複雑で不親切なストーリーを理解するのにかなりエネルギーを使ってしまいます。据え置き版はUIの日本語化、そして日本語字幕に対応していますが、操作が複雑化していてゲームとしてストレスが溜まりやすいです。
基本的にはどちらを遊んでも問題ないと思いますが、個人的には(英語になってしまいますが)スマホ版をオススメします!