【先住民族の伝承をゲーム化】インディーゲーム「Never Alone」が色々と新しい試みで面白い

こんにちは!最近、ゲームがしたくてしたくて堪らなくて、仕事が終わったらいつも会社から走って帰っているコウノ アスヤ(@asuyakono)です。
皆さんは、インディーゲームってご存じですか?
インディーゲームとは、大雑把に言うと、「プロまたはアマチュアの小規模なチームによって制作され、ダウンロード販売などでユーザーの元に届けられるゲーム」です。今まで一般的だった、「大企業が」「大規模なチームで制作し」「大手の流通に乗せて大量生産」していたメジャータイトルとは対局にあるような存在とも言えます。音楽における、メジャーレーベルとインディーズの関係を想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。
今日は、そんなインディーゲームの中でも、その制作過程や内容が特殊な、とあるゲームを紹介します。
そのゲームとは「Never Alone」
実在の民族によって語り継がれる伝承をベースに、いや、伝承をそのままゲーム化したと言っても過言では無い本作を、遊び終わった観点からレビューがてら紹介しようと思います。
ゲームだからこそ伝わるテーマ
実在の民族が制作に参加
Never Aloneは北極海沿岸地域に住む民族「イヌピアット」の伝承をモチーフにした横スクロールアクションゲームです。
主人公はイヌピアットの少女「ヌナ」と彼女が偶然出会ったホッキョクギツネ。
吹雪が吹き荒れる雪原や、オーロラのおばけが住む廃墟などを冒険します。
文字を持たないイヌピアットの人々は、絵と言葉によって、民話「クヌーサーユカ」を語り継ぎ、現代までその文化をつないでいました。このゲームは、そんな彼らと、ゲーム開発社や民俗学者が手を組んで作られたそうです。
イヌピアットの人達は、ただシナリオを共に作っただけでなく、ゲームの制作にしっかりと携わり設定考証を行いました。
結果として、ストーリーだけでなく、世界観設定や武器や登場人物のディテールに至るまで、しっかりと彼らの文化が反映されてます。
民話を伝える手法として、ゲームが選ばれた
驚くべきことに、Never Aloneは「ゲーム化」ありきの企画ではありませんでした。
アラスカの先住民やイヌピアットによって構成されるNPO「CITC(Cook Inlet Tribal Council)」が、失われつつあるイヌピアットの文化をいかに多くの人々にリーチできるかを考えた結果、最も最適なメディアとしてゲームが選ばれたんです。
ゲームは、本や映画とくらべてそれ自体を楽しむためのハードルが高いですよね。
目で見て、耳で聞いて、手で操作して、頭で考えて…
結果的に、物語や困難、費やした時間が自分の体験として記憶に残る性質があるので、失われつつある実在の伝承をより印象的にリーチするには、ゲームがうってつけだったんだと思います。
なんと嬉しい。
横スクロールアクションである理由
ゲーム自体は、操作がシンプルで誰にでもとっつきやすいように、横スクロールアクションが選ばれてます。
このゲーム、横スクロールにしたのは、大正解だと思いました。
このジャンルは、基本的に「進むのは右」「落ちそうだったらジャンプ」の2つでゴールまで進めるし、操作や攻略が難しくない分、物語やグラフィックをより楽しむ事ができます。
マリオやカービィのおかげで、ジャンル自体のハードルもかなり下げられた状態なので、「より多くの人にリーチする」「今までリーチできていなかった層に届ける」というこのゲームの目的を果たす上で、ジャンルのチョイスは本当にナイスだと思います。
ゲーム内で観覧できる語り部のインタビューが濃厚
ゲームを進めると、節目節目でイヌピアットの語り部のインタビュー動画を見ることができるようになります。
この動画が、とても内容が深くで、興味深い。
各動画は数分と短いんですが、それぞれの動画にテーマがある構成になっています。
イヌピアットの文化や、彼らのコミュニティに対する考え方、さらには登場する武器の説明(実際に使われていたらしい!)など、これらがゲームの内容とリンクしていて、登場する敵キャラや、主人公が遭遇するシチュエーションを裏付けるものになっています。
「あ、この話はあのシーンのことか」「あ、この徹キャラさっき語り部の人が言ってたやつだ」と言った風に、適度に挿入されることで、ゲームと民話、互いのディテールを掘り下げる事に成功しています。
遊び終わって思ったこと
ゲームは”おもちゃ”を超えたのではないか
日本と海外でテレビゲームに対する印象は違うとは思いますが、僕はこのゲームを遊びおわった後に「あ、ゲームが次のレベルに進んだな」と思いました。
つまり、日本におけるゲームというのは、”おもちゃ”の延長線上でした。
「いい年して、まだゲームなんてやってんの?」「ゲームばっかりやって、暇なの?」などと揶揄されたことのあるゲーマーは多いと思いますが、そういう人たちにこのゲームを見せてこう言いたい。
「時間を作ってでも、何歳になってでも遊ぶべきゲームがここにある」
と!!!!!
失われつつある民族の伝承が、テレビゲームを通じて人々の記憶に残っていくなんて、なんて素晴らしいことなんだと!!
……、実際に言ったら気持ち悪がられるので我慢しますが(笑)、民話を伝える手法としてゲームが選ばれたことの可能性をスルーしてはいけないと思います。
インディーゲームだからできること
実際問題、メジャータイトルではこういう作りのゲームは無理だと思います。
壮大な物語にする必要は無いので、ゲーム自体はとても短くなる。
そうなると値段もあげられないので、パッケージ化して大量生産をすることが難しくなる。
だから、作れない。
メジャータイトルではそうなっていたでしょうが、インディーゲームならそれができる。
こういった、作り手の語りたいテーマを、割りと濃い感じでコンパクトに反映し、インターネットによって安く、多くの人々にリーチできる性質をもっています。
個人や少数で制作できるようになったからこそ、ゲームが商品という概念から離れ、作品として生まれ変わろうとしているんだと思います。
インディーゲームにまつわる、作者と作品の関係性に興味を持たれた方がいたら、ぜひ
インディーゲーム:ザ・ムービーという映画を見てみてください。
FezやBRADEなど、有名なインディーゲームの制作者に密着したドキュメントになっているので、ゲームという文化が今、どういうものになろうとしているのか、少しわかると思います。
最後に
こういうゲームこそ売れて欲しいし、もっとこういうゲームが出てきて欲しい。
そして、ゲーマーはあまり食わず嫌いせずいろんなゲームを遊んで、良いゲームはしっかり褒めてあげるべきだなーと思いました。
さて、褒めまくっていたので最後に気になるポイントを上げておきます。
簡単すぎるわ!!!!!!!!!!!!!!!!!!