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PS4「Unravel」はゲーム界のピクサー「Coldwood Interactive」が産み出したゲーム表現の到達点

こんにちは!コウノ アスヤ(です。

PS4向けにひっそりと発売されていたゲーム「Unravel」をクリアしました。

いやー、このゲームすごいです!久しぶりに諸手を挙げて、一切の不満なく、褒め称えたいゲームを遊んだ気がします。

ビデオゲームというエンターテイメントは「総合芸術」などと呼ばれることがあるように、音楽、システム、ストーリー、グラフィックなど多くの要素で構成され、またそれらのコラボレーションによって最終的な完成度が判断されます。

この「ビデオゲームとしての完成度」という観点で言えば、このUnravelというゲーム。歴史に名を残すレベルかもしれません。

北欧はスウェーデンから届いたゲーム

Unravelは、スウェーデンのゲームディベロッパーColdwood Interactiveによって開発された横スクロールの2Dアクションゲームです。

ゲームは、田舎暮らしの老婆の落とした毛玉から、一体の人形が生まれるところから始まります。プレイヤーは、その毛玉人形「ヤーニー」となって、彼女の過ごしてきた人生を小さな人形の視点から追体験していきます。

まずどう考えてもグラフィックがやばい。これだけで一定数のゲームファンをノックアウトしてる気がします。

ヤーニー人形をつくった老婆。田舎の家で孫と暮らしている。ヤーニー人形をつくった老婆。田舎の家で孫と暮らしている。

動き出すヤーニー人形。動き出すヤーニー人形。

ルールや操作は至極シンプル。「移動」「ジャンプ」「毛糸を投げる」これだけです。これらのアクションを活用して、スウェーデンの自然がモチーフとなっている美しいステージを冒険します。

鮮やかかつ鮮明なグラフィックに惚れ惚れする。鮮やかかつ鮮明なグラフィックに惚れ惚れする。

自分の体から伸びる毛糸を使ってターザンしたり、オブジェクトを動かして進めていくパズル的謎きが面白いポイントで、これは最近のゲームだと「海腹川背」や「ちびロボ」に近いかもしれません。

自らの毛糸をつかってアクションをこなす。自らの毛糸をつかってアクションをこなす。
物を引っ張ったり、ぶら下がったり、その用途は多岐に渡る。物を引っ張ったり、ぶら下がったり、その用途は多岐に渡る。

ちゃんと面白い、しかも秀逸

こういう「なんか雰囲気が良いゲーム」というのは、往々にしてそれ以外の要素がおろそかになっちゃうことが多いんですが、Unravelはさすがでした。

毛糸を活用したアクションやステージのギミック、それら全ての要素が「毛糸人形であるヤーニー」というキャラクターだからこそできるものになっていて納得できるし、そこに毛糸人形がいる感じがすごい出てて感激しました。

謎解きは程よく難しい。簡単すぎない難易度でgood。謎解きは程よく難しい。簡単すぎない難易度でgood。

そしてさらに驚いたのは、敵キャラが出てこないこと。純粋なアクションで楽しませてくれます。(カニや鳥などの生き物はでてきますが、敵という感じではありません)

通過必須のチェックポイントである毛玉。通過必須のチェックポイントである毛玉。

道中に点在する毛玉に触れないと、体の毛糸が足りなくなって身動きが取れなくなる仕組み。これはヤーニーという存在の制約という意味でもありますし、ゲーム的なチェックポイントでもあると言えます。

水に落ちると1ミス。定番のつくり。水に落ちると1ミス。定番のつくり。

水に落ちるとミス。定番の仕組みですが、毛糸だから水に落ちるとアウト、という意味づけがしっかり成されています。

こういう「システム」と「設定」のシンクロが随所に見られることで、どんどん世界に引き込まれていく自分がいました。

被写界深度と光の表現

被写界深度と呼ばれるピントの仕組みを活用して、フォトリアルながらも奥と手前をガッツリぼかすことで、ちゃんと「小さい物体が動いている感じ」を出せているところに感動しました。こういう、奥行きをガツーンを感じられるグラフィックって今まであんまりなかった気がします。

被写界深度とは、ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のこと。被写界深度とは、ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のこと。

語りをなくした、余白のあるストーリー

山の中、海岸、工場など様々なシチュエーションを冒険していく中で、「老婆の記憶の中ではこのシチュエーションはどういう思い出だったんだろう?」と思考を巡らせながら冒険するのが楽しいです。

老婆の思い出が光の幻影となってヤーニー人形の前に現れる。老婆の思い出が光の幻影となってヤーニー人形の前に現れる。

ステージの各所に表れては消えていく人間のシルエットなど、直接的な説明がされないぶん、プレイヤー自身が考え、感じたものこそがこのゲームのストーリーになっていく作り。僕はこの手の手法が大好きです。

全ての要素が、どんどんシンクロしていく

老婆の毛玉から生まれたヤーニー。彼女の記憶を追体験してく物語。毛糸を使ったアクション。ただの景色を美しく、壮大に見せる表現。それらが積み重なっていくことで自分の中に生まれてくるオリジナルの物語。それら全てが文字通り毛糸のようにつながっていき、それによってゲームの中に込められた作り手の思いを紐どいて(Unravelして)いく。

ここまで完成された一本のゲームは、そうそう出会えるものではないと思います。

遊べば遊ぶほど、物言わぬドラマに魅了されること間違い無し。遊べば遊ぶほど、物言わぬドラマに魅了されること間違い無し。

あとさりげないですが、スウェーデンの民族音楽をベースにしたサウンドトラックも素敵でした。セリフやイベントを含めてゲーム中に起伏が少ないので、その分音楽によるムード作りは重要です。その辺り、やはり分かっているな、という感じ。抜け目ない。

ゲームという媒体、それがもつ力

ゲーム終盤の演出は本当に歴史に残りそうな勢いだし、エンドロールの見せ方や最後のメッセージとかもう本当にやばかった。

あらゆる要素が組み合わさり、プレイヤーがそれを体験することで一つのエンタメとして昇華されるのが、ゲームという媒体の良さです。Unravelによって改めてその素晴らしさを感じさせてもらったし、それをここまでコンパクトに完成度を高めて作品にしてくるディベロッパー「Coldwood Interactive」には、もう感謝しかないです!感謝です!!

彼らの姿勢、メッセージ、スキルに対して、僕はCGアニメ界の金字塔ピクサーを重ねてしまいました。というかピクサーですよ。もう。ゲーム界のピクサー。

Unravelは現在、PS4,Xbox One,PCで遊ぶことができます。1800円(税別)です。安すぎぃ!

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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