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【レビュー】あの「まかない飯」は「極上のディナー」へ。ゼルダの伝説ムジュラの仮面3D

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自分の力を信じなさい…信じなさい…

今日も超ゲームウォーカーをご覧くださってありがとうございます。ムジュラの仮面3Dをクリアしたコウノ アスヤ(です。

シリーズのファンにとっては、旧作のリメイクは嬉しいもの。
では、ゼルダの伝説 ムジュラの仮面3Dの場合はどうでしょうか?
「製作者からの挑戦状だ」「難しすぎる」「前作を遊んでいる前提の作りだ」
オリジナル版でそんな評価を受けてから15年がたった今、オリジナルファンがムジュラの仮面に求めた姿とは?

今日は、ゼルダの伝説ムジュラの仮面3Dをレビューしてみようと思います。
ですが、まずはその前に、少しばかり「ゼルダの伝説」というシリーズのお話をさせてください。

ゼルダの伝説シリーズ

スカイウォードソード
ゼルダの伝説シリーズとは任天堂の人気アクションRPGシリーズ。
1986年に第一作が発売され、2015年に至るまで、リメイクを含めるとその数なんと20作品を超えます。

作品毎に多少変わりますが、「主人公のリンクがお姫様であるゼルダ姫を助けるために、魔王であるガノンドロフを倒す」というのがおおまかな流れ。
プレイヤーは、物語の鍵となるアイテムや人物が眠る「ダンジョン」を攻略しながら成長していき、村や城下町に散らばるサブイベントを通じて世界を感じながら、最後にはラスボスを倒して世界を救います。
ガノンドロフ

ゼルダの伝説の構造

謎解き
ダンジョンやフィールドに散りばめられた「謎」を解くのが、ゼルダの伝説シリーズの醍醐味ですが、第一作目から最新作である神々のトライフォース2まで、ずっと一貫して守られている構図があります。
それは、ゲーム製作者から明示的に与えられる「課題」と「褒美」そして「動機」の関係性。

課題

課題
出典:GameLog

「課題」とはダンジョンに用意された無数の「」のことです。
ゼルダの伝説では「これが課題ですよー。これを解決してくださいねー」と、制作者が丁度良い難しさの「謎」を用意してくれています。
僕たちはその「課題=謎」を解き、その時に鳴る「謎解き音」を聴いて達成感を味わうのです。

ちなみに、「課題」はダンジョンに用意された「謎」だけではなく、「ダンジョンのボス」「ダンジョンそのもの」「村や地域の危機」そして「世界の危機」といった様に、段階的に構造化されています。

褒美


出典:無数の月

そして「褒美」は、謎を解くことで成る「謎解き音」であり、その結果手に入る「ちいさな鍵」や「弓矢」であり、ダンジョンをクリアすることで救われる街であり、そしてゲームをクリアする事で訪れる世界の平和です。

「課題」と「褒美」は、それ自体がより大きな「課題」であり、大きな「課題」を解くと、よりおおきな「褒美」が貰える…と、こういう構造になっています。

動機

動機
そしてその2つをつなげるのが「動機」
いくら「課題」と「褒美」が用意されていたとしても、それに挑む「動機」が必要ですよね。ゼルダの伝説は、それも用意してあります。

それは、ダンジョンに用意された謎の「ヒント」であり、キャラクターの「セリフ」であり、そして「ストーリー」です。
これらはプレイヤーがゲームを勧める動機となり、謎を解いて褒美をもらうための推進力となるのです。

おもてなしの極み

ゼルダの伝説関連のインタビューを読んでいると度々登場するのが「おもてなし」という言葉。
僕は、見た目やストーリーでは無く、この「おもてなし」の循環構造こそが、ゼルダの伝説らしさだと思っています。
動機→課題→褒美→動機→課題→褒美…このサイクルこそが、謎をより面白く、褒美をより嬉しく、ストーリーによりのめり込めるようにしていくれているのだと思います。

ここで重要なのは、こちらが勝手に満足しているのではなく、あくまで用意された課題を解決した結果、それに対応した褒美が貰えるのが嬉しいということです。
この、「作られ」「お膳立てされ」「計算しつくされた」文字通りまるでパズルのように美しくハマっていく謎と、それを解く気持ちよさを僕たちは楽しんでいるのです。
ここが、マインクラフトやオープンワールドゲームのようなゲームとの違いであります。自由度が制限されているからこそ、そのレールの上で最高級のおもてなしを受けるのが、超気持ちいい、というところですね。

ゼルダの伝説は「謎解きゲー」であり「ご褒美ゲー」でもあるのです。

ムジュラの仮面の構造


前置きが長くなってしまいました。
さて、ムジュラの仮面の話をしましょうか。

そもそも「ムジュラの仮面」は、1998年11月21日に発売された「時のオカリナ」の後継作として、わずか1年半で制作されました。

シリーズで唯一、前作の直接の続編であり、さらに前作を遊んでいる前提のゲームデザインは、シリーズファンに非常に高評価でした。
一見さんお断りの如く用意された高難易度の「課題」、時のオカリナより増加した大量の「褒美」、時のオカリナの素材をフル活用した結果生まれた、違和感のある世界への興味という名の「動機」
そしてなにより、3日間を繰り返すというオリジナリティ溢れるゲームシステム。
これらは全て、限られた制約の中でこそ生み出されたもの。

オリジナル版を開発した当時、『時のオカリナ』を開発した直後、1年の期限で『ムジュラの仮面』を作っていたのですが、けっこう過酷な状況だったんですね(苦笑)。その環境の影響か、『時のオカリナ』はおもてなしの心で作っていたのに、『ムジュラの仮面』は、「『時のオカリナ』を遊んだ人なら、これくらいできるだろう」という挑戦状を叩きつけるようなバランスで作ってしまったところがあって。そもそも、『時のオカリナ』を遊んでいることを前提にした作りにもなっていたのです

出典:ファミ通


世界観やキャラクター、あらゆる要素がハイコンテクストな面白みを帯びていた本作は、シリーズファン、特に時のオカリナが好きな人(僕)にとっては、色々な意味で思い出に残っていると思います。

たとえば、いつもは最高のおもてなしをしてくれいたレストランが、ある時「君は常連だし、味も分かる客だからこれで」といって、サッと作れるけどわかりにくい料理(でも美味い)を出してきたら「どれどれ」とその料理を必死で堪能しようとするでしょう。

しかし逆を言えば、アクションや謎解きが不得意なプレイヤー、謎よりも世界観に惚れていたプレイヤーには、「難しすぎる」事が作品の評価を下げる要因ともなっていたという、とてもニッチなバランスの作品でした。
「さすがにこんな料理だされたら楽しめないです…」ってなっちゃたプレイヤーもまた、同時に沢山存在したということですね。

ムジュラの仮面は、言うなれば一流レストランの「まかない飯」のようなもの。
1流のシェフが、僅かな時間で、見た目を気にせず、限られた食材を使って飯を作る。
ただし、それを口にするのは理解のある身内、尚且つ味のわかるシェフだからこそ、妥協はできない。

そんな中、2012年に発売された時のオカリナ3Dのヒットを受け、今作もまた最新のゲーム機でリメイクされる運びとなりました。

はたして。

まかない飯から、極上のディナーへ


結論から言います。
今作「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面3D」はとても良く出来てます。
というか超面白いです。快適です。グッっときます。ゾッとします。

最初、リメイクときいて、不安だったのは「当時不評だったシステム等が改善されることで、すごい簡単になってしまうんじゃないか?」ということでした。
それこそ、昨今の、ぬるーい…ぬるーい!ぬるぅぅぅぅぅぃ!!ゲームみたいに。

しかし、プロデューサーである青沼英二さんは、社長が訊く『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』青沼英二プロデューサーインタビュー繰り返しこう言うのです。

「難しさはそのままに、より遊びやすくした」

青沼さん。あぁ。青沼さん。
あなたは、分かっている。

ムジュラの仮面の魅力は、前作ありきの高難易度の「課題」と、それに伴う圧倒的な「褒美」でした。
絶対に「簡単」になってはいけない。ヒントを出しまくったりしてはいけない!

見た目を綺麗にしてもいい。食器をちゃんとしたものに変えてもいい。添え物を加えてもいい。
しかし、味だけは変えてほしくなかったのです。

青沼さんは、わかっていました。

料理の見た目は美しく、器は綺麗なものへ、そしてカトラリーはとても使いやすくなって、ムジュラの仮面は美しく生まれ変わっていました。
そう、味だけはそのままに!極上のディナーへ。

ひゃっほーう!最高だぁー!
時のオカリナという名のレストランで食べた、あのまかない飯だ!あの味だ!
しかも、食べやすくなってるー!

5億点!

良かったところ、悪かったところ

最高に面白かったムジュラの仮面3D。
振り返ってみると、良くなっていたポイントは全て、公式サイトでプッシュされてたポイントそのままでした。笑
おもてなしのプロやなぁ。

セーブポイントの追加



たとえば、世界中に散りばめられたフクロウ像や新たに追加されたセーブポイントで、ほぼいつでもセーブができるようになりました。
もちろん、ダンジョンの攻略中に時間は巻き戻せませんし、初日に戻れば全てリセットされる仕様はそのまま
「当時不評だった時間制限を緩くしました」なんてなってないところが、安心だし素晴らしい。
ただ、時の歌でセーブできなくなっていたのは残念でした。
あれのおかげで「再プレイ時は1日目から」というとても気持ちのいい中断のしかたができていたのに、今回は再プレイを開始すると2日目の途中から、といったことが多くなってますから。
もともと合った機能を削る意味は、そこまで無い気がするなぁ。

団員手帳の機能強化



新たなボンバーズ団員手帳のおかげで、全てのサブイベントが記録され、とてもアクセスがしやすくなってます。
もちろん、「サブイベントはここにあります」というようなあからさまなヒントはありません。
「ポストマンがつらそうに走ってるらしい…」とか「海辺の漁師が新しい商売を始めるらしい点」といった案配。
ちょうどいいです。どんどん「動機」が沸き起こっていきます。
ただしこれも、ちょっと手帳自体が見難いかなーと思いました。
なんで全部縦並び!?もうちょっとカテゴリー分けとか構造化して欲しかったです。

ボス戦の戦略化


グヨーグ
そして、ボスの弱点が明確化されることで、より戦略的になりました。
グレートベイの神殿のボス、グヨーグなんかは、それがとても顕著ですね。
オリジナルではゾーラのバリアと妖精でゴリ押ししていたんですが、今作ではちゃんと「なるほど、あれをあーして、こうすれば…」といった「攻略」ができるようになってます。
個人的には、ボス戦では1番楽しく改良されてたなぁ。
目ん玉ドッカーン!なビジュアルはちょっとさすがにやりすぎじゃねーかなとは思いましたが。笑

釣り堀


釣り堀
釣り堀が2箇所追加されていますが、これは個人的にはどうでもいいや。笑
でも普通に素晴らしい追加要素。暇な時に遊ぶのに丁度いいんだと思います。
使いきりだったお面の役割が釣り堀で活躍するというアイデアも、作品への愛を感じます。

細かなディテールアップ


細かなディティールアップも嬉しかったです。
ただオリジナルのデザインを元に綺麗にしてあるだけじゃなく、ちゃんと作りなおしてある感じがとても良かった。
たとえば、デクナッツがちゃんと丸々しいデザインになっていて可愛くなっていたし、アタック時に帽子が木のトゲになっていたりする細かい改善も素晴らしい。
ガロのお面がボスガロデザインになっているもの良い変更だし、アイテム欄のオカリナがちゃんと変身後の見た目に変わっているのも最高。
時のオカリナ3Dの時もそうでしたが、やっぱリメイク版はクリミアさんの美人度が半端じゃない。
セールス文句を広いしたあとの笑顔がたまりません。

味はそのままに、それ以外を徹底的に改善

時のオカリナはもともと「動機」がとても丁寧に作られていたゲームだったので、3DS版は若干簡単になりすぎていた感がありましたが、ムジュラの仮面はそんなことありませんでしたね。
「難しさ」「歯ごたえ」は残したまま、「ただただ、遊びやすく」なっています。
「わかるわけないやん」というようなノーヒントな謎もなくなり、「理不尽な難しさ」は、「納得できる難しさ」にかわり、「褒美」はより、美しくなりました。

青沼さん!あなたは、まかない飯を、極上ディナーへ見事に昇華させてみせた!
僕は自身をもって、これを友達に進められます。
「あの時の味、そのままだ」と!

気になったポイント

褒めすぎてキモいので気になったポイントもあげておきます。

・時のオカリナ未プレイの人のために、あらすじを強化しても良かった。
・フェザーソードとミラーシールドは、選択式にして欲しかった。
・音楽もリメイクして欲しかった。

2083WEBさんによる『ゼルダの伝説』サウンドインタビュー – 横田真人氏が語るでの、横田さんによれば

今回もアレンジするという選択肢は当然あったわけなんですが、原作の64版も、ゲーム中のひとつひとつの音色が64独特のものだったんですよね。今の最先端の音源って、けっこう生音に近いんですよ。それを使ってアレンジをすると、その64独特のゲーム音楽らしさが失われてしまう気がして。ファミリーコンピュータでいうピコピコ音みたいな感じで、64も、そのゲーム機だったからこその音色というものがあったんですよね。それは大切にしたいんです。

とのこと。
うーむ。まぁ分からなくは無い。
でもなんで「音楽だけ」そのままなんだろうなぁ〜

買うべき人、そうでない人


さんざん褒めちぎりましたが、唯一、ムジュラの伝説3Dをオススメできない人がいます。
それは、「ゼルダの伝説シリーズを一切遊んだことがない人」です。

いくら遊び易くなっているとはいえ、「動機」の部分はやはり「時のオカリナを遊んでいる」事がかなり重要になってます。
謎解きの難しさはもちろん、物語もそうだし、キャラクター配置や、その他の小ネタまで全て…。

なのでそういう方はまず「時のオカリナ3D」を遊びましょう。
そして、それが楽しめたあかつきには、おまちかね「ムジュラの伝説3D」を遊んでください。

あの食材が、調理方法を変えるだけで、こんな美味くなるのか!
そんな感動を、是非味わってみてください。

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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