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【レビュー】Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-「人を選ぶがとても品のあるゲーム」

幸福な消失

今日も超ゲームウォーカーを読んでくださってありがとうございます。コウノ アスヤ(です。

美しいグラフィックが評判を読んだインディーゲーム「Dear Esther」のデベロッパー「The chinese room」による新作ゲーム「Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-」をクリアしました。

謎めいたトレイラーやあらすじから、ゴリゴリの雰囲気ゲーフェロモンを感じていた今作ですが、よくも悪くもまさに「雰囲気ゲー」でした。

「歩く」「調べる」ただそれだけ


操作は「移動」と「調べる」のみ。戦闘も謎解きも無く、ただ空虚で美しく無に帰った廃村を、ひたすらに歩きまわるゲームです。

スタート地点
ゲームを始めると、プレイヤーは何の説明も受けないままイギリスの田舎町に放り投げられます。何もわからないまま村を探索してみると、どうやら何かの実験が行われていたことや、それによって何故か村の人々が消えてしまったらしい、というような物語の断片がわかっていきます。

削りに削ってデモシーンを無くした導入は、ICOや風ノ旅ビトのような雰囲気ゲームの王道を感じて良いですね。

こんなにも歩くのが遅いゲームは初めてだ

散らかった庭
この不可思議なゲームを遊んだ人がどれくらいいるのかは定かではありません。しかし、ただひとつ明確に分かることは、このゲームを遊んだ人は一切が「歩くのが遅すぎる」と思うはずだということ。まだ遊んでいない人は「遅い移動」をイメージしてみてください。このゲームの移動速度は、その3倍遅いです。この遅さは尋常のそれではなく、確実に「歩くのが遅いゲーム」として歴史に残るでしょう。

「なんていったっけあの、エブリバディなんとか…」
「あぁ、歩くのが遅いゲーム?」
「そう、それそれ」

既に起こった物語を追体験する、という手法

漂う光
街に漂う光に触れると、光は人の形を形成し、消失に向かうドラマを追体験できます。光が会話している間は、それを傍からボーっと眺めるだけですし、顔や服装でキャラクターを識別することすらできませんが、光の立ち位置やわずかな移動、そして声優の確かな演技力で「見れる物語」になっているのが驚きでした。

ふつう、こんな光だけの会話なんて見せられても退屈しそうなものです。

光の会話
村の様々な場所で体験できるドラマは、どれも断片的すぎて、最初は本当に意味が分かりません。しかも、光で形成されているので、誰が誰だかもよく分からない。しかし、そんなふわふわした物語も、遊んでいくにつれて次第にプレイヤーの中に組み上がっていきます

「あぁ、つまりこういうことか」
「ん?ということは、あれがあぁなって…?」

散りばめられた物語に決まった順序は無いため、プレイヤーによって感じる物語が変わってくると思います。これはゲームにしかできない手法です。

「語りすぎない」を地で行く品のあるストーリーテリング、素敵でした。

ただし、その内容は賛否がわかれるかもしれません。人々に異変が起こっているのに、この期に及んで安いメロドラマのようなやりとりを見ているようだったし、それぞれの人物がみな往々にして自分の事しか考えてないのが、すこし醜かったです。見ていて腹が立つ人物もいました。もちろん、可哀想だと思える部分もあって、もしこういう状況に陥ったら、自分ならどうするか?を考えるのも面白い思考実験かもしれません。

僕なら鼻血が出た瞬間諦めそうです。

村は綺麗だが、あまりにも空虚すぎる

趣ある田舎町
マップはかなり広いです。グラフィックも綺麗だし、ただ眺めて散歩するだけでも楽しめると思います。しかし「物語を追体験するゲーム」という意味においては、少しばかり退屈だと感じる面もありました。

基本的には、光を見つけて物語を追い、鳴り響くラジオと電話から会話を聞く作業が少し単調で、歩くのも遅いので、後半になるとちょっと面倒臭さを感じるようになります。なのでもう少し、物や状況を使用して終末の様子を残して欲しかったです。子供の絵によってその時の様子がうかがい知れるようなところがあったりしたので、その方向でもう少し作り込んで欲しかったところ。

あとオブジェクトの使い回しが多いです。赤い自転車登場しすぎ

環境音、音楽


このゲームは、必ずイヤホンかヘッドホンをつけてプレイしましょう。静か過ぎる村に、うるさいくらいに響く風の音や、些細な環境音に耳を傾けましょう。プレイ体験をよりいっそう深めてくれます。音に関しては、全体的に丁寧に作られていると思います。

イベントシーンに入ると、そこに綺麗な劇伴がフェードインしてくるのもスマートで好きだったし、「分かりやすい区切り」がない分、かなりシームレスな盛り上がりを感じることができます。これはすばらしかった…。

拍手は出来ないが、遊ぶ価値はある

プレイ時間は3〜5時間ほど。ボリュームを考えると、すこし値段は高めに感じました。かなり上質なゲームだとおもいますが、人を選ぶ作りだと思うし、なにより遊びにくさや物足りなさは否めません。

「美しいグラフィック」「音楽」「雰囲気」「散歩」この辺りのキーワードにひっかかるプレイヤーなら買いでしょう。

ただひとつ注意してほしいのは、このゲームは本当に歩くのが遅いということです。

歩くのが遅いゲームが苦手な方は、買うのを控えましょう。

Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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