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【感想】”王道感”に呪われた怪作「ブレイブリーセカンド」をボロクソに言おうと思う。

ブレイブリーセカンドOP

前作である「ブレイブリーデフォルト」からその世界観を引き継いだ正当な続編として、3DSで発売された新作「ブレイブリーセカンド」

発売日に購入して遊んでいてはいたものの、なかなか進める事ができずにいたのですが、先日やっとのことでクリアしたので、簡単な感想を残しておこうと思います。

巷では色々言われている本作ですが、はたして。

前作ブレイブリーデフォルト

ブレイブリーデフォルト

ブレイブリーセカンドを語る上で、どうしても避けては通れないのが前作である「ブレイブリーデフォルト」です。ファイナルファンタジーやドラゴンクエストなどの有名シリーズを有するスクウェア・エニックスが「王道に回帰した新規IP」を発売するということで、当時とても話題になりました。

元々は「光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝」の流れを汲んだプロジェクトでした。クリスタルを柱に据えた世界観、魔法や召喚獣のネーミングなど、ファイナルファンタジーシリーズの面影を多分に感じさせます。

光の4戦士「光の4戦士」。ブレイブリーデフォルトにとても良く似ている。

スタッフが豪華だった

やはり特徴は豪華なスタッフ陣でしょうか。
ファイナルファンタジー14等で有名なグラフィッカー「吉田明彦」による美しいアートワーク。光の4戦士でアートを務めていた「宮本由香」による美しい背景美術。シュタインズ・ゲート等のシナリオライター「林直孝」による、王道ながらも新しい構成のシナリオ。Sound Horizonの「Revo」による古臭くもどこか懐かしい音楽。そして、快適なバトルや、古臭くも快適にチューニングされたジョブシステム。あらゆる要素が高品質にまとまっていて、とても高評価なタイトルでした。つまり前作は「全てが古臭いのに、質が半端ない新しいRPG」という感じだったのです。

ティズの真実や、フレンド召喚システムなどのゲーム的ギミックを逆手に取ったシナリオ、良かったですよね。YUNOやever17などの名作を思い出すレベル。シナリオが林さんなことも関係してるでしょう。まぁ、終盤の面倒な繰り返シナリオはちょっとダレちゃいましたけど。

正当続編ブレイブリーセカンド

ブレイブリーセカンド

そして、その続編である本作。
正式名称は「BRAVELY SECOND END LAYER
当然、シリーズだということだからブレイブリーデフォルトの目玉であった「圧倒的王道感」「美麗なアートワーク」「巧みなシナリオ」「快適なシステム」などの要素を継承しつつも、新たな何かを見せてくれるのではないかと期待するわけです。

美しいグラフィック美しいグラフィック表現。

とこーろーがー!!!!

良いところもあるが、悪いところが際立って目立つ

結論から言うと、個人的には素直に楽しめませんでした。もちろん、良いところと悪いところ両方あるんですが、ちょっと悪いところが際立ち過ぎている印象です。

グラフィックは相変わらず素晴らしい

魔法学園都市イスタンタール。圧倒的に美麗な背景。学園都市イスタンタール。圧倒的に美麗な背景。
主人公の「ユウ・ゼネオルシア」主人公の「ユウ・ゼネオルシア」

背景がイラスト、キャラクターが3Dポリゴン、という前作から引き継がれた絵作りは、プレイステーション世代初期のRPGを彷彿とさせますね。特に背景美術が圧巻で、独特なデザインや温かみのあるイラストが見惚れるほどに美しく、世界観が尋常じゃないレベルに達してます。そして、3D立体視ととても相性が良く、平面のイラストがグググっと立体的にレイヤー構造化されるところもこのゲームの特徴的なところ。まるで飛び出す絵本の中を歩き回っているような感覚に陥ります(マジで)。これだけで買った価値あったな、と確信が持てます。

ガテラティオ物語の始まりの地。港町ガテラティオ。
ラクリーカ前作にも登場した風車の街「ラクリーカ」

新規追加の楽曲は微妙

僕は基本的に、そのゲームの音楽が良いかどうかは、サウンドトラックを買いたいかどうかで判断するんですが、そういう意味では今作の楽曲は微妙でした。前作から引き継がれたREVOによる楽曲は相変わらず良いんですが、ryoによる新規の楽曲はちょっと世界観やシリーズ感に合ってませんでした。なんか記憶に残る曲が全然無い…。

けれど強いて言うなら、サブシナリオのプリン・ア・ラ・モード戦で流れる「スーパースタープリンの巨大船、神アレンジ」が良かったですね。笑
音といいテンションといい、ボカロ出身のryoっぽい名曲に仕上がっている…。

良くも悪くも快適すぎるバトル

「高速再生」「行動パターンをセットして使う」「連続バトルで経験値倍増」などのバトル面のシステムはとても良く考えられていて、RPGにつきまとう「面倒臭さ」を極限まで解消しようという工夫が見られます。というか、快適さで言えば全RPG中1位だといっても過言では無いかもしれません。
ジョブシステムには大きな変化が見られませんでしたが、ウィザードの「修飾句」のように、他のジョブのアビリティを変形させるジョブなどは上手いと思いました。あれによってジョブ選びに幅が出てて良かったです。

連続チャンス連続して敵を倒すとどんどん経験値が倍増していく「連続チャンス」

ただし、これら快適すぎるシステムは、後述の「リアリティが無いシナリオ」ととても相性が悪いと思います。何のためにサクサク敵を倒しまくって、何のためにここまで工夫してキャラ育成してるんだろう、と思えてくる辛さがある。

ここまで快適にするなら、王道のRPGにこだわる必要ありますかね?

シナリオにリアリティが無い

一言で言うと、ブレイブリーセカンドのシナリオには全くと言っていいほど「リアリティ」が無いですよ。とんでもな魔法や超絶的な武器が存在する世界だからこそ、「ファンタジーな部分」と「リアルな部分」のラインを、明確にしてあげる必要があるんじゃないんですか。

例えば、FF9では黒魔道士ビビの命に関する真実を聞いて「バトルでの死とは明確に違う命の終わり」を意識しちゃうし、PS2のオーディンスフィアは「冥界にいけば、死んだ人物を連れ戻せる」という世界観ですが「冥界の女王を倒すと冥界が塞がる」というシーンでハッとリアルさを感じるわけです。ファンタジーものは、ベースのリアリティのラインが低いからこそ、どこかで「リアルさ」を出してあげないと物語に全然真剣味が出ないんですよ。

冥界「オーディンスフィア」冥界の女王を倒すと、二度と死者は蘇らなくなる。

ブレイブリーセカンドはその点、世界からリアルさを感じるシーンが全くもって皆無。人が死んでも生き返る、さらわれたお姫様がヘラヘラしている、呑気にキャンプなど、あげていくとキリがありません。本当に、一度たりとも物語上で「ハッ」と息を飲むような「リアリティのライン」が引かれないんです。だから、「どうでもいいようなシーンで、主人公たちの感情が爆発している」とか「シリアスなイベントなのに、主人公たちに緊迫感がない」などの違和感を感じさせてしまうんです。これが終始続くので、辛いのなんの。稚拙なセリフ回しやあからさまな伏線でプレイヤーを舐めるのもいい加減にしてください。

ブレイブリーソード物語上、なんの意味もない迷シーン。

多少の整合性の無さは全体が良ければ気にならないんですけどねぇ。

調べてみると、どうやら前作のシナリオを担当していた林さんはいなくなり、スクウェア・エニックスのプロデューサーやシリコンスタジオのスタッフの方がなんと5人で共同担当しているそうです。うーん、どうりで。テントイベントが単発でとっ散らかっていたり、セリフや展開が幼稚で寒かったのはそのせいなんですね。

ダンジョンが代わり映えしなくて死ぬほどつまらない

クソダンジョンダンジョンはほぼ全てがただの迷路で、仕掛けや謎解きはなんの面白みもない。

物語の合間に割り込んでくるダンジョンが死ぬほどつまらなかったです。
代わり映えしない背景に、ただの迷路みたいな単純なマップ、行き止まりには適当なアイテムを用意して、プレイ時間だけが積み重なっていく雑な構造。なんで急にスイッチでてくるの!?なんでそれで岩が上下するの!?ねえ!なんで重要なアイテムは全部よくわかんない洞窟みたいなところに落ちてるの!?

豊富なサブリナリオは雑でつまらない

クリアすると前作のジョブが手に入るバーターサブシナリオは、内容がとてもしょうもなくてつまらなかったです。前作の登場キャラが出てくるのはいいのだけど、悩みやイベントが全部雑で、メインシナリオを控えているこちらとしては、割りとどうでも良い内容。ギャグならギャグで割りきってくれればいいのに、急にシリアスになったり、リアルっぽい問題(男女差別とかマクロ経済とか)を入れてくるからぜんぜんダメ。
メインストーリーと全くもってして噛み合ってないのもひどいです。

どうでもいいサブシナリオサブシナリオは総じて「どうでも良い」

その他、良かったところ

ゲームを始めたら流れる「前作のおさらいムービー」はとても良かったですね。いい感じに前作がまとめられていたし、音楽も前作のものを使用していて2年前に遊んでいた記憶が蘇ってきてワクワクしました。

増田セバスチャンがデザインした魔王のデザインも良かったですね。禍々しくてふざけていて綺麗でゴチャゴチャしていて「なんか気持ち悪い怪物感」はとても出ていたと思います。

魔王増田セバスチャン監修の「魔王」デザインがとても良い。

あと、第4の壁」を破るメタ的な世界観構造も良かったです。シナリオは酷かったですが、それでもやっぱりこういう構造はワクワクします。ラスト付近のあの展開、ほぼギャグでしたが、若干テンションあがっちゃったのは否めません。

総合的にみると、見てくれはとても良いが、中身が残念な出来

前作が面白かっただけに、とても楽しみにしていたんですが、見事に裏切られた気分です。ひとつのゲームとしても、シリーズファンとしても、野放しにオススメはできませんね。しかし、「あの世界観とグラフィック、サクサク楽しいバトルだけ堪能できればシナリオとかどうでもいい!」という人にはオススメできるかなと思います。強くてニューゲームや月面の復興など、やりこみ要素っぽい仕組みは用意されているんですが、無理です。なんとか1週クリアするのが精一杯でした。

続編あるみたいですよ。そうですか。

続編に向けて2年半くらいずっとやってきたので、今は反響をひとつひとつ楽しんでいるところです。もちろん、期待に応えられなかった部分も目にしていますし、真摯に受け止める部分は受け止めつつ、その上で次はどうしようかなと企画を練っているところです。

すでに次回作を構想中!?―人気RPG「ブレイブリーセカンド」を手がけた浅野氏と高橋氏にインタビュー – gamer

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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