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【感想】ゼノブレイドクロスを100時間遊ぶと、カオスな闇鍋の中を笑顔でお散歩する記憶が残る

XenobladeX

こんにちは、コウノ アスヤ(です。

日頃からバカみたいにゲームを遊んでいると、ときたま面白すぎて思わず一人で笑ってしまうような作品に巡りあうことがあります。現実の世界がどうでも良くなり、ずっとそのゲームの世界に浸っていたいと思えるような作品がそれです。モノリスソフトのゼノブレイドクロスは、その意味では「最高の世界」を持ったゲームだと言えるでしょう。作り込まれた3Dマップを駆けまわりながら、何度も「すげぇ…」と一人で笑ってました。

しかし、それ以外の(大量の)の要素は、まるでランダムで素材を投入する闇鍋の如くカオスの体を成し、何をどう楽しめばいいのか皆目検討も付かない状態に仕上げられておりました。3Dマップという最高の器の中でグツグツと煮えたぎる数多の要素は、俺は素材の味まで分かるんだ派のプレイヤーと、お金払ったんだから味わい尽くさなきゃ派の両者からはまぁまぁな評価を受けているようですが、マズイ料理はマズイと言いたい僕ですので、ここではそれをしっかり書いておこうと思います。

Xenoblade X(ゼノブレイド クロス)というゲーム

戦闘画面
ゼノギアス、ゼノサーガ、バテン・カイトス、ゼノブレイド等の名作を生み出してきたモノリスソフトが、2015年4月25日に発売したオープンワールドRPG。前作ゼノブレイドで評価の高かったノンリニアなフィールド、仲間との連携が熱いバトルシステムなどを引っさげ、HD画質の美麗な世界観で新たな物語が語られます。2013年の発表当時から、多くの事前PVなどを通して「これは神ゲーだ」「はやく遊びたい」などのリアクションを獲得し、その期待感は今年最高レベルといっても過言ではありませんでした。ヤバイぐらいにハードルが上がった状態での発売、というわけですね。お疲れ様です。

広大なフィールドは文句なしに楽しい

xeno01
冒頭でこのゲームは闇鍋のようだと言いましたが、それは具材の話しでありまして。まずこのゲームは、広大で独創的なフィールドがメチャクチャ楽しいです。本作の世界観はグランドセフトオートシリーズなどのリアル系、エルダースクロールズシリーズなどのファンタジー系のどちらのタイプとも言えないSF系。本当に見たことのない景色が目の前にドッカーン!!と広がってて超テンション上がります。コレほどのボリュームのマップを、手を抜くこと無くつくり上げるモノリスソフトのスタッフには頭があがりません。

とにかくスケールがデカすぎる

スケールがデカイ
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地形、植物、モンスター、それら全てのスケールが想像の範囲を超えてデカい。意味不明な地形、理解不能な光景、「なんなんだこれは…」と圧倒されます。オープンワールドという手法をとったことで、今までは「背景」だった場所が、ゼノブレイドでは全て「フィールド」となり、そのデカすぎるフィールドも全て「自分の足で感じることができる」スケール感へと落とし込まれています。霞むような山々の頂上に自分の足で到達し、それまで踏みしめてきた大地を見下ろした時の感動は、そんじょそこらのRPGでは味わえないでしょう。この点においては、「ゼノブレイドクロス、買ってよかったぁ」と感嘆の声を上げてしまいました。

敵のデザインも秀逸

敵のドール
xeno03
くそ巨大な恐竜(っぽい何か)とか、キモい宇宙人ネーチャンが操るイカしたロボットとか、月明かりを背景に光を発しながら飛行する2匹の飛竜とか、とにかく遭遇する全てのモンスターが見とれるほどにちゃんとモンスターしてて「うわぁぁぁ!なんだこいつ、やべえ!」感を何度も感じました。そして、この世界に存在するモンスターはもちろん「全て」と戦うことが出来ます。このゲームではデカさ=強さなので、巨大な敵に挑むと一瞬でやられてしまいますが、それもまた世界のデカさ、自分の小物感を味わえて一興。

某ファイナルファンタジーの某グランパルスでは、遠方に見えるとてつもなく巨大なモンスターは眺めるだけで戦えませんから…。(明らかにラスボスより脅威だろこいつ)
ファルシ=タイタン

耳に残りすぎるBGM

澤野弘之の音楽が、豪華なオーケストラサウンド(テンション爆上げ)で、物量でゴリ押すゼノブレイドクロスのマップにとてもマッチしてます。とにかくモリモリでゴリゴリな澤野サウンドは、打楽器の音色で自然とテンションが上がってしまうように、なにか心の根底に眠る「この世界で…生きていくんだ!」というような生の衝動を駆り立てられるような気がします。眼前に広がる広大な世界と澤野弘之のテンション爆上げな音楽、この2つのコンビネーションで「ゼノブレイドクロス…オモシロイ…」と思えること間違いなし。

ただし、ボーカル曲の使い方がちょっと微妙で、プレイ中何度も聞くことになるフィールド曲やバトル曲に、あざとい英語の歌声が入っているのは残念でした。ゲーム音楽というのは、いくら良くてもゲームプレイ体験のお膳立てをするものであるべきで、全てが全てモリモリボーカル曲である必要は無いはずです。女の人の「イェアー!」敵な叫び声が至る所で聞こえてくるので耳に残りすぎる。その辺りメリハリを付けて欲しかったですね。

サウンドトラックの作りが雑

まず曲名が意味不明です。その辺りカッコつけなくていいから、ゲームの思い出とちゃんとリンクするように名づけて欲しかった。どれがどの曲かさっぱり分からないし、ゲームのストーリー順にもなっていない。しかも複数の曲が1つのトラックに纏められてたりして、完全にゲーム体験とは断絶された一つの「澤野弘之の音楽集」になってしまってるのが本当に残念。

とはいえ、やはりそれぞれの音楽は単体としてみるとメチャクチャアガるし、出来も良い。ガンダムUC、アルドノアゼロなど澤野弘之の曲が好きな人は間違いなく好きになれるハズ。僕はサントラ買いました。仕事中に聴いてテンション上げてます。

用意された物語と、自分で獲得する物語

エルマ
さて、褒めるのはこの辺りまでにして、本題に入ります。

MMORPGであるファイナルファンタジー14を遊んでいたので例に出しますが、あのゲームでは主人公はただの冒険者であり、プレイヤーが好きなクエストを自分で選んでクリアしていくことで、その世界のなにかしらの問題に自分で足を突っ込み、次第に自分がその世界で特別な存在であるという物語を獲得していく構造になっています。これはFF14に限らず、大体のMMORPGに備わっている構造だと言っていいでしょう。こういう構造は、ガッチガチに作られた物語(主人公)を演じ、感情移入して楽しむストーリー型のオフラインRPGとは対となるものであり、どちらかを選ぶのならどちらかを捨てなければいけないと、個人的には思っています。それが取捨選択であり、こだわりというものです。

しかし、ゼノブレイドクロスはこの「用意された物語をなぞっていく」楽しみ方と「用意された世界を好きなように楽しむ」楽しみ方を両方手に入れようとしてしまったがために、「用意された物語が好きなように楽しめるようになってはいるものの、好きなように楽しめるようになっているから用意されているように思えない」という、なんだか自分でも何を言ってるのか分からなくなるレベルのカオスっぷりを発揮しています。

「アバター式に途中変更」の罠

アバター作成
本作は、オフラインRPGなのにプレイヤーがアバターを作成するタイプのゲームになっています。どうやら、開発スタッフの横田さんという方が、オフラインRPGに寂しさを感じて、オフラインRPGをオンラインRPGっぽくしようと考えてしまったからみたいです。

もともとRPGはひとり遊びのゲームだったと思うんです。でも今回は、オープンワールドの世界のなかでまったくひとりで遊んでいると、
「自分だけしかいない」というような孤独感を、少し感じるようになったんです

この世界をもっと生き生きとした空間にするためには、ネットワーク対応にして「誰かとつながっていたほうがいいのでは」という話になったのが、事の発端です。

社長が訊く『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』

アバターというのは、より強く自分=主人公を演出することが出来ますし、他者と遊ぶオンラインRPGなら、その見た目で演出する「個性」もプレイの楽しみのうちの一つです。それはそれでいいんですが、アバターはあまりにもプレイヤーと一体化してしまうがために喋れない意思を持たせられないから物語の駆動力にできないというオフラインRPGの主人公としては最大の欠点を持っています。

オンラインRPGっぽいアバター式のオフラインRPGと聞くと、何故かドラゴンズドグマを思い出します。あのゲームの物語は決して良い出来だったとは思えませんが、それでも初めから一貫してアバター式という仕様を守りぬいたのでしょう、物語はしっかりと「用意された世界を好きなように楽しむ」ようになっていたし、自分から物語を獲得していく構造にもなっていました。巻き込まれ系はこういうゲームでこそ映えるものです。

ゼノブレイドクロスは、当初はストーリーありきのオフラインRPGだったのに、途中でアバター式の擬似オンラインRPGに変更してしまったがために、なぜか主人公より目立っている女性キャラクターが物語を引っ張り、なぜか主人公はパーティの会話に参加せず空気で、なのに重要な場面では急に勝手に動き出す、という奇妙な語り口になってしまっています。この世界では、主人公=僕はなぜか優遇され、自分の意思で獲得してない物語に振り回され、何もしてないのに話が進んでくので「俺、この物語に必要ねえじゃん…」という無力感と脱力感に苛まれました。

主人公が自分で動けないので、用意されたガチガチの設定もストーリーで語りきれず、サブクエストやキズナクエストで補足的に散りばめはしたものの、そんな断片的に得られる情報じゃ「ふーん、そういう物語なんだ」という温度感でしか楽しめなくなってしまいます。もう、ごちゃごちゃしすぎてて「ここをこうすれば良くなったはず」というアイデアすら浮かんできません。すみません。

ただし、アバター式に変更になる前から存在していた「世界観設定」と「プロット」は、なかなかの出来だったと思います。ゲームを遊び始めてから数時間の間、世界観設定を説明されるところでは素直にワクワクしたし(結局なにも語られませんでしたが)、場面場面でのアクシデントや展開にはSF的アツさを感じずにはいられませんでした。そのあたりにはしっかりと「ゼノ」シリーズの良さを継承している感があります。

要素が多すぎて纏められてない

本作のPVを見てもらえるとわかると思いますが、このゲームにはカオスな物語以上に、闇鍋の如く大量の要素が打ち込まれています。遊び始めはワクワクしたものですが、次第に気づいていくのです、このゲームのとっ散らかりっぷりに。

武器・装備の種類はとても多いですが、強さのバランスが下手くそで殆ど使わないし、8つのユニオンも正直どれに所属してもそこまで変わらないし、デバイスとかアフィックスとかクラスとかアーツとかソウルボイスとかコレペディアとかホログラムシアターとかデバイスとか…もう、とにかく多すぎる。オンラインRPGじゃないんだから、もっと要素を絞ってくださいよ。思いついた要素全部打ち込むのがクリエイターの仕事じゃない、ということを覚えていただきたい。

あまりにとっ散らかりすぎて、前作で評判の良かったバトル中の掛け声えやジェムなどの要素すらよく分からないバランスに変更されてて悲惨この上ないです。

遊びにくさが目立つ

xeno04ゲーム中のほとんどのテキストがとても小さくて見難いことこの上ない。

このゲーム、全体的にプレイヤーの快適さが追求されていません。ゲーム中のテキストが小さくてとても見辛かったり、画面UIがゴチャゴチャして分かり辛かったり、上げていくときりがないですが、とにかくこのゲームにおいて「快適な操作感」は皆無に等しいです。モンスターのロックオンですら何度ストレスを感じたことか。そこの辺り関してはブレイブリーセカンドを見習って欲しいところ。

面白いが、人を選ぶゲームだと思う

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色々と書いてきましたが、とにかくデザインやスケール感含め、フィールドは尋常じゃなく最高です。世界の開拓感、冒険感は他に類を見ないレベルだと思います。ただ、その超スケールな世界に要素を沢山詰め込みすぎてて破綻してる部分が沢山ある感じ。結果、遊びにくいシステムと、どんどんつまんなくなっていくメインストーリーのせいで、僕の感情曲線は右肩下がりに…笑

総ボリュームが”無駄に”あるせいで、遊ぶのにとても、とても、とても時間がかかってしまうゲームですが、お金を出して買う価値は、人によってはあると思います。ゼノブレイドのようなストーリーを求めてる人は買っちゃダメ、そうじゃなくて世界観に惚れているひとならオススメ。そんな感じです。

僕は買ってよかったと思ってます。クリアした後でも、たまに起動して残ってるサブクエ遊んじゃうくらいには、まだこの世界の虜だ。

と、書いてたら前作のゼノブレイド遊びたくなってきたw

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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