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あらゆる要素が噛み合っていない、時代遅れなRPG─「ゼノブレイド2」レビュー

どこかでボタンを掛け違ったRPGは、遊べば遊ぶほどストレスがたまっていく。ゼノギアスで日本のゲーム史に名を残した高橋哲哉が、最新作ゼノブレイド2で反省すべき点があるとすれば、それは、作り込まれた各要素の「噛み合わせ」につきるだろう。

※本レビューはネタバレを含みます

ゼノブレイド2

本作は、ゼノ”ブレイド”の名を冠するブレイドシリーズの3作目である(モノリスソフトのゼノシリーズとしては7作目)。2010年にWii向けに発売された1作目ゼノブレイドは、骸になった2対の巨人の上を冒険するというユニークな世界観と、その世界を見事に表現したシームレスなフィールドが評価され人気を博した。

1作目ゼノブレイド

その後WiiUでは、フィールド探索の面をさらに強化した2作目ゼノブレイドクロスが発売され、シナリオやクエストの構成などに批判を受けながらも、壮大なフィールド探索という面では概ね高評価を博した。

そして本作、前作の反動か原点回帰か、高橋哲哉率いるモノリスソフトは、ヒロイックで王道なRPGという方向に揺り戻しをかけた。だからこそ、2というナンバリングをタイトルに入れたのだろう。

ちなみに、本作のストーリーは単体で完結するようになっているが、シリーズファンに向けたニヤリポイントも随所にバッチリ用意してある。前作を遊ばないと話がわからない、ということはないだろう。

すべての要であるストーリーがイマイチ

雲海から資材や遺物を引き上げるサルベージャーの少年レックスは、ある日、「天の聖杯」と呼ばれる女の子ホムラに命を救われる。彼女は天にそびえ立つ世界樹、その頂上にある「楽園」に連れて行って欲しいとレックスに告げるのだが…。

天の聖杯─ホムラ

どことなく、スタジオジブリの名作「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせ、男のロマンを感じさせる導入である。しかし、このザ・ボーイミーツガールで王道なストーリーは、全体のあらすじこそ素晴らしいものの、じっくり楽しもうとすればするほど、思いを巡らせるのが馬鹿らしく思えてくるほどに「ガバガバ脚本」なのである。

争いを好まない心優しい少年であるはずのレックスは、小型の神獣(アルス)を使役した神獣船をモノのように破壊し乗り捨て、出会ったばかりの師匠キャラであるヴァンダムさんは、登場するや否や、レックスを逃がす時間稼ぎのために武器を自らの体に突き刺して絶命する。しかしレックスは逃げることなく、「天の聖杯」の力を覚醒させ、一瞬で敵を退ける。ヴァンダムさんは見事に犬死にだ。その場その場での「熱い展開」を重視するあまり、多くのキャラクターが、見事に舞台装置としての役割しか果たせていないのだ。

肌の露出が極端に多いホムラのデザインは人を選ぶだろう

こういった、書ききれないほどの「なんでだよ」で構成されたストーリーは、最後まで同じ調子で続く。その上、やたら頻繁にイベントシーンが導入され、しかも一つ一つがとても長いものだから、「たのむ…もういいからゲームを遊ばせてくれ!」という感情に苛まれ続ける。

その他、1話でレックスの出身地を知っているはずのニアが、5話で「へぇ、あんたってリベラルタスの出身だったんだ」と言ってしまう記憶が消失事件などの「エピソード間の不整合」が散見されるなど、本作のシナリオは極めて悲惨なものである。

本来、避けるべきである「その場限りの設定」や「エピソード間の矛盾」が散見されるのは、おそらく、総監督・高橋哲哉に加えて2人の脚本家がシナリオに参加しており、話数単位で分担して執筆していたからではないだろうか。

「萌え」やら「ツンデレ」やら、やたらひと昔前のオタク文化の文脈を多用しているあたりも、個人的にはとても気になった。時代が止まってるというか、おっさん臭いというか…(おっさんがおっさんに向けて作ったRPGだとするならば、これもまた正解なのかもしれないが…)。

つくり込まれているが、調整が不完全なシステムたち

RPG(ロールプレイングゲーム)において大事なのは、演じたくなるような物語と、そこに遊びを融合させたシステムの部分である。いくらストーリーが素晴らしいものであっても、システムがそれにそぐわなければ良いRPGとは言えない。

慣れるのに時間がかかるバトルシステム

World of WarcraftやFINAL FANTASY XIVといったMMORPGライクなバトルシステムは、シリーズのお約束であり本作でも健在だ。加えて本作は、ブレイドスイッチ、ドライバーアーツ、ドライバーコンボ、ブレイドアーツ、ブレイドコンボ、必殺技、チェインアタックと、詰め込められる要素はすべてぶち込んだといわんばかりのシステムになっている。覚えるべき操作が盛りだくさんながらも、その分システムを理解するとかなり奥深いバトルが楽しめる。

複雑だが、理解すると奥深く楽しいバトルシステム

一方で、いくらブレイドを自由に切り替えて戦えるとはいえ、キャラクター毎にベースとなるロールが設定されているため、終盤になるにつれて各キャラクターに最適なブレイドが収束していくのは設計ミスのように感じた。それならば、キャラクター毎に同調できるブレイドがあらかじめ決まっていた方が良かったように思う。

もうひとつ問題があるとすれば、この複雑で戦略的なバトルシステムをプレイヤーに教えるチュートリアルがこれ以上ないくらいに雑であるということだ。こういうのはゲームの進行とリンクさせて段階的にプレイヤーに教えていくべきものであり、決して最初にテキストで一気に教えてハイ終了で済ませてはいけない。そのせいで、多くのプレイヤーが中盤〜終盤でやっと本作の面白さを理解しはじめるようなバランスになってしまっているのは実に勿体ない。

過去作に劣るフィールドデザイン

もはやゼノブレイドシリーズのお約束となった「広大なフィールド」は本作でもバッチリ健在。歩き回る楽しさや、強大なモンスターと遭遇するハラハラ感などは相変わらずとても楽しいものだった。

しかし、いかんせん地上という地上はすべて「神獣の体内か背中の上」という世界観なので、フィールドが神獣毎にブツ切れ、閉鎖的になっており、過去作のような、ひとつなぎの広大な世界を感じることはできなかった。

美しく壮大だが、過去作と比較すると、どこか閉鎖的に感じてしまうフィールド

さらには、町や集落がひとつ存在するだけの神獣があったり、終盤に向かうにつれてどんどんフィールドが狭く一本道になっていくのはいただけなかった。リニアなストーリーものである以上、終盤に広大なフィールドを持ってこられても面倒臭いという問題はあるが…。

また、雲海の満ち引きというギミックがほぼ意味をなしていなかったり、宝箱を開けたり採集したりすると、なぜかアイテムが飛び散ってひとつひとつ回収させられるなど、細かい不満点も多かった。

サブクエストは比較的豊富で、ものによってはボイス付きでリッチに語られるものもある

サブクエストは大量に用意されており、フィールドの探索と世界への愛着、そしてキャラクターの育成(経験値がもらえる)の役割を同時に担っているのは優れた設計だった。いくつかのサブクエストには、レアブレイドが絡んでくるものも用意されており、サブクエストで仲間になるブレイドには一層愛着が湧いてしまうというものだ。

ブレイド同調は本作のストーリーテーマにはそぐわない

通称ブレイドガチャと呼ばれているブレイド同調でコアクリスタルからブレイドを獲得していくシステムは、実際のところかなり疑問が残る。複数のイラストレーターが別々にデザインしたレアブレイドたちは、魅力的なデザインで視覚的にも楽しめるが、見た目もユニークでパラメータも強力なため、結局それらを求めて何回もガチャを回すハメになる。演出が冗長でスキップ不可なこともあり、だんだんとレアじゃないブレイドが「ハズれ」っぽい気持ちになってきて、ブレイドと人間の共存を謳うストーリーと完全に正反対になっていて笑いがこみ上げてきてしまった。

著名なイラストレーターによるレアブレイドのデザインはとても魅力的

ちなみに、不要なブレイドは「傭兵団」というシステムで派遣することができるが、ブレイドを数体見繕って派遣すると時限で達成する簡単な仕組みなので、据え置きのRPGには不向きである。ソーシャルゲームじゃないんだから…。

その他、キャラクターを育成・カスタマイズする要素としてコアチップ、アシストコア、アクセサリー、ポーチアイテム、キズナリングなどの要素があるが、決して複雑なシステムではないにもかかわらず、非常にわかりづらいメニュー画面のせいでとても覚え難く、使い辛いシステムになってしまっている。後述するが、本作はメニュー画面やキーバインドが非常に解りづらい作りになっているため、あらゆる操作にストレスが発生してしまっているのだ。

すべてのやる気を削ぐユーザーインターフェース

思い返せば、本作を遊ぶ上で感じていたストレスは8割くらいがユーザーインターフェースのわかりにくい設計によって引き起こされていたように思う。とにかく、すべてのメニュー画面がこの上なく使い辛いのだ!「画面内に情報が少ない」「何がどこにあるのかわかり辛い」「目的の画面にたどり着くまでに操作が多い」など、挙げていくとキリがないが、とにかくわかり辛い。

プロが設計したとは思えないメニュー画面の構造

キーバインドも謎めいている。なぜXボタンがスキップトラベルなのか?なぜ十字キーという数少ないボタンに、チュートリアルを入れたのか?なぜRPGなのに、メニューを開いた画面で各キャラクターのパラーメータが見えないのか?そもそも前作ゼノブレイドクロスでも、文字が小さすぎて視認性が悪いなどの問題があった。RPGでメニュー画面が使い辛いのは由々しき事態である。モノリスソフトは、一刻も早くUIデザインのプロフェッショナルを雇うべきだ。

最高に最高な音楽が最高

サウンドプロデューサーである光田康典率いるサウンドチームによる楽曲たちは、とても素晴らしいものだった。RPGにおける音楽は、主張しすぎず、それでいて場面によっては心に染み込んでくるような強い旋律が必要だ。フィールドでは壮大な冒険を感じさせ、イベントシーンでは感情を揺さぶるような力強さを見事に音楽で表現したサウンドチームには感謝の念が尽きない。本作ゼノブレイド2で、なんの不満もなく手放しに誉める気になれるのは、音楽ただそれ一点に尽きる。

あらゆる要素が最後の最後で噛み合ってない、残念な作品

ストーリーの大筋は良いのに脚本が不完全、戦闘は面白いのにチュートリアルが雑、レアブレイドの概念は面白いがガチャシステムがストーリーとバッティングしている、ユーザーインターフェースが分かりづらすぎて育成が楽しめない…。個々の要素を点で見てみると確かにクオリティの高さ感じるのだが、俯瞰して全体を線で見てみると、見事に各要素が噛み合っていない勿体ない作品だった。それでも、もう少しシナリオがしっかりしていれば、遊び終わったあとにもっと満足感を味わえたのだが…。

とはいえ、賞賛しているプレイヤーが多いのまた事実。人を選ぶゲームなのか、はたまた個人的に合わなかっただけなのか、それはゲームという媒体の特性上、誰も知る由はない…。

ゼノブレイド2 | Nintendo Switch

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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