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Sword&Sworcery(スキタイのムスメ)はiPhoneをゲーム機に変えた。あの音とグラフィックに、僕らは代償を払うべきだ

コウノ アスヤ(です。

名作中の名作スマホゲー「Sword&Sworcery(スキタイのムスメ)」が日本語対応じゃなくなったとして、昨年末からレビュー欄が盛り上がっています。なんだか、sword&swoceryがリリースされた直後、まだ日本語になんて対応していなかった頃の事を思い出しました。

ゲーム機はゲームによってゲーム機たり得るなんて事は、ゲームを遊んでいる人からすると当たり前のことなんですが、それでいても、後にも先にもこんな体験をする事ができるゲームは、Sword&Sworcery(スキタイのムスメ)以外にないよなぁと、感慨に浸ってしまう次第でございます。

Sword&Sworcery(スキタイのムスメ)

Sword&Swocery(スキタイのムスメ)は、著名なジム・ガスリーのオリジナル楽曲がアルバム一枚分とSuperbrothers Inc による素晴らしいアートワーク&デザインがビデオゲームの魔法使いであるトロントのCapyの手によって詰め込まれたタイトルです。

AppStoreのリード文です。こんな宣伝の仕方をしたゲームがかつてあったでしょうか。内容を何も説明してない。それでも多くの人が、このゲームを音と見た目でダウンロードするでしょうし、僕もそうでした。そして、瞬く間にこのゲームに魅了されるんです。否が応でも。

音は両方から聞こえていますか?ステレオで?

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「スマホゲーなんて暇つぶしにしかならない」などと斜に構えていた当時の僕は、ダウンロードしたばかりの「Sword&Sworcery(スキタイムスメ)」のアイコンをタップし、文字通り暇をつぶそうとしていました。けれど、起動してすぐに流れる、スマートフォンの小さな画面に吸い込まれるような音、そして表示される「音は左右からちゃんと聞こえますか?」なんてチュートリアル。なにやら、このゲームは僕に代償を求めているようだと、僕も本気で遊ばないといけないなと、これがスマホゲーが暇つぶしからゲームに切り替わった瞬間でした。言い換えれば、iPhoneがゲーム機になった瞬間、だとも言えます。なにやら一つのアート作品に向き合ったような、緊張感を感じるんです。

僕たちは指先でしか干渉できない

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プレイ、と呼んで良いのかいささか悩んでしまうような操作方法(タップした場所にキャラが進むというものですが、コンシューマメインの僕にとっては馴染みの薄いスタイルだったのです)でゲームは進みます。当時は全文英語で、しかもどうやら口語体のようで、阿呆な僕は辞書をひきながらじっくりとテキストを呼んでいきました。ハマる、ハマる。のめりこむ。「雰囲気優先で作った」「音楽からストーリーが感じられた」と語る開発陣の思うツボでした。

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巨大な構造物、謎の羊飼い、人面岩が美しくならぶ小さな世界。「この世界はなんなんだ?」イヤホンをつけ、必死にスマートフォンの小さな画面を覗き込む僕。なんどもなんども画面をタップしては、主人公(であろう)女性を、必死に導こうとする。モンスターが登場すれば、彼女が剣を構えるようにスマートフォンを縦向きに持ち変える。不気味な岩が動き出せば、彼女と共につばを飲み込む。冒険しているのは、彼女なのだけど、それを覗き込んでいる僕もまた、共に冒険している気がする。いや、ゲームを作った作者と、対話している?

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いま客観的にその姿を見られるとしたら、随分と縮こまった滑稽な格好をしていたと思います。けれどそこには、モダンなドット絵で描かれる美しい世界と、電子的かつリアリティのあるサウンドが散りばめられた、Sword&Sworcery(スキタイムスメ)の世界が、確かにありました。

冗談じゃない。雰囲気も良いが、立派なRPGだ

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「ゲームらしいゲームでなく、遊んでいてリラックスできるゲームを作りたい」と語るSuperbrothersの人たちですら、ここまでちゃんとゲームになってしまったのは想定外じゃないでしょうか。ICOやワンダと巨像などのアドベンチャーゲーム、ゼルダの伝説や悪魔城ドラキュラなどの謎解きゲームから得たとされるエッセンスが、雰囲気ドリブンで制作されたこのゲームの「デザイン」に溶け込んで、それだからこそ得られるゲーム体験を生み出している。つまりは「他者が描いた理想の空想の中を、覗きこむように探索できる」という奇跡を、生み出してしまってます。能動的でインタラクティブなアート作品だとか、立派な謎解きゲームだとか、如何ようにも呼ぶことができそうですが。これは、うん。奇跡に近いぞ。

ICOのような?いやいや、ICOに匹敵する

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ゲーマーは、雰囲気の良いゲームに出会うと開口一番、「ICOっぽいゲーム」と言ってしまう呪いに掛かっています。今日も、先に謝っておきます。はい「このゲームはICOっぽい」です、けれど、こうも思います。今後、スマホにおけるICO的な立ち位置に、このゲームはなるんじゃないか?ICOが商業主義と自己表現の狭間で成功したように、このゲームもまた、時を超えて思い出される作品となり得るんじゃないか?なんて。

あれから数年、スマホゲーム市場には自己表現と商業主義に押しつぶされた「お洒落な雰囲気をまとった、美しいゲーム風ゲーム」が腐るほどにあふれています。Sword&Sworcery(スキタイのムスメ)は、その中でも数少ない「面白いゲーム」にもちろん入るし、スマホゲーでオススメを聞かれたなら、僕は間違いなくこのゲームを進めます

英語もなかなか良いよ

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遊べば遊ぶほど、その世界に馴染んでいってしまうのが心惜しい。なんども記憶を消して、初めから遊び直したい。「音は左右から聞こえてますか?」という、あのテキストに驚きたい。

「日本語じゃない」から遊ばない、という人がいるのは非常に悲しいし、もったいないと思います。もちろん日本語対応を謳っておきながら日本語にならないのはダメなんですが、まぁまぁ、落ち着いて。英語を調べながら、あるいは、なんとなく意味を把握しながら、ゆっくり遊ぶのも、悪くはないですよ。

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この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

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