暴走するヨコオワールド、受け入れられるか否か「NieR:Automata(ニーア オートマタ)」
コウノ アスヤ(@asuyakono)です。
なんだか最近ゲーマー界隈で、というか僕の観測範囲内で「ニーアオートマタ」の評価が高くて驚いてます。「ペルソナ5」「グラビティデイズ2」と並んで、世界的に成功した和ゲーの枠組みに入っていたり、海外でも優れた和ゲーとして高い評価を得たりしています。
いや、おかしい。
だって僕はこのゲーム、そんなに面白くなかった。「僕が面白くないと感じたんだから世間的に評価が高いわけがない!」とアホみたいなことを言うつもりは毛頭ないですが、どうにも世間的な評価と個人的な感想のあいだに、デカい溝を感じて仕方ありません。ということで、発売から半年以上経ってしまっている現状ではありますが、ニーアオートマタのレビューなど書いていこうと思います。
NieR:Automata(ニーア オートマタ)
NieR:Automata(ニーア オートマタ)は、2017年2月にスクウェア・エニックスより発売されたアクションRPG。荒廃した世界の中で、アンドロイドである主人公「2B」と「9S」が、敵である機械生命体から地球を取り戻すために奮闘する姿が描かれます。
開発は、「ベヨネッタ」や「メタルギアライジング」を手がけるプラチナゲームス。アクションの触り心地やグラフィクスの仕上げなど、至るところにプラチナっぽさを感じますが、全体的には「ドラッグオンドラグーン」や、前作「ニーア・レプリカント」を手がけたディレクターヨコオタロウによる、通称「ヨコオワールド」が炸裂した作品です。
ヨコオワールド
トレイラーなどをみるとわかると思いますが、このゲーム、やはり雰囲気が独特です。全体的にずーっと「悲しい、寂しい、切ない、苦しい、だけど美しい」みたいな雰囲気でゲームが進行します。ネガティブ要素の肯定による圧倒的アブノーマル。これがいわゆる「ヨコオワールド」であり、本作はこの雰囲気を楽しめるかどうかが評価の分水嶺になると思います。そしてヨコオワールドにはもう一つ「ゲームシステムがイマイチになりがち」という特徴が挙げられます。ヨコオワールドが好きになれても、ゲーム的欠陥が気になればアウト。気にならなければ最高のゲーム、という評価の分岐が絶対に存在します。
僕個人としては、ヨコオワールド→好き、ゲーム的欠陥→無理、という分岐を辿ってしまい、ダメでした…。アートワークだけが好みのゲームを喜んであそべるほど時間にも精神にも余裕ありませんから!!
フェチズムを感じる世界観
前作「ニーアレプリカント」では、荒廃したファンタジー世界の裏側に潜むSF設定が魅力でしたが、今回はのっけからガッツリSFが披露されます。「地球外から侵略してきた敵によって地球が荒廃」「人類は宇宙に逃げ延び、アンドロイド部隊で対抗」「人間的意識を持ち、文化を形成しはじめる機械生命体」など、なんともSF的王道を貫く感じ。僕は好きです。
遊んでて思わず吹き出したんですが、「花火が打ち上がる廃遊園地の遠景に、地上から物資を打ち上げるロケットが見える(特に意味は無い)」とかあって、なんかもう真髄ですよね。細かいことは忘れて、とにかくSF的エロというか、フェチズムを感じざるを得ない演出が多数。ツボれば楽しい、ズレれば寒い。そんな感じ。
美しき世界観は説明不足
美しい世界観によって描かれる本作のストーリーですが、一方で、とにかく全編にわたって展開が唐突で、キャラクターのリアクションについていけませんでした。
「複雑な設定の全容を把握しているのはスタッフの中でもヨコオタロウしかおらず、製作陣は都度直接確認に行っている」という逸話が有名ですが、なんだか本当にゲームもそんな感じでした。「あぁ、頭の中にはいろいろ設定があるんだろうなぁ」というのは伝わるんですが、説明が足らなすぎてついていけない。バックボーンの理解が追いつかないから、キャラクター達のリアクションにも全然ついていけません。
一応、サブクエストやTipsで世界観を紐解くことはできますが、それはしっかり作られたメインストーリーに枝葉的に肉付けされていくのが面白いというもの。肝心の幹がスカスカじゃ枝葉もただの枯葉。ヨルハ(寄る葉)部隊とか言ってる場合じゃないっす!
楽しいが、マンネリ化する戦闘
「簡単な操作で派手で気持ち良いアクションが楽しめる」という点においてはさすがプラチナといった具合で、とても良くできたバトルシステムでした。ベヨネッタやメタルギアライジングの系譜をしっかり踏んでいる感じで、攻撃がヒットした時のヒットストップや各種エフェクトは職人芸といった感じで、絶妙なタイミングなど含めて、個人的な好みにドンピシャ。
しかし、全体的に敵の種類がどれも似通っていて攻撃パターンも単調なので、繰り返し戦闘することがどんどん苦痛になってきます。なのに、このゲームはなぜかレベル制が採用されていて、レベルが低いとボスに歯が立たないので、単調な戦闘をひたすら繰り返してレベルをあげる他ありません。これが苦痛だった…。最終的に、イージーモードでオート攻撃・回避のスキルを装備して無限湧きスポットで放置するという、ゲーマーとしては屈辱の極みでしかない愚行を犯すハメに。
敵の種類と攻略方法にバリエーションを持たせ、レベル制ではなく、スキル制にして、扱えるアクションが増えていくような感じだったらまた違ったかもしれません。あるいは、レベルデザイン(敵やステージの難易度の設計)をもっと丁寧に行っていれば…。
必然性は無いが、秀逸なアートワーク
過去作と比較しても、とにかくずば抜けて良かったのがアートワーク。戦闘中のHUDやメニュー画面のUIは、こだわりとセンスを感じる仕上がりで、よくもまぁこんなシンプルで無機質なのに、どこか暖かく絶妙なUIを作れるなぁと関心しました。アイテムを拾った時の表示など、一部の要素が小さかったり場所が端っこだったりしたのは、個人的にマイナスポイントでした。それは見づらい。
そしてなんといっても、主人公である2Bのキャラクターデザインと3Dモデリングは最高ッ!!の一言。モノクロで統一された色彩設計、ゴシック風の衣装に、巨大な日本刀。口元のほくろから、意味の無い目隠しまで含めて、完全にフェチズム全開。ゲーム中の3Dモデルの再現度も異常で、2Bが動き周り、敵をバッサバッサなぎ倒していく姿を眺められるだけでも眼福というもの。もうね、動きが良いんですよ。武器ごとにしっかりモーションが変わって、その種類も豊富。ベヨネッタからしっかりと受け継いだ見惚れるほどの挙動。
そのほか、主人公たちヨルハ部隊が使用する「飛行ユニット」は、その変形機構を含めて超カッコイイし、一部のボスキャラは、不気味さだったり、巨大さだったり、特長のデフォルメと一点突破みたいなこだわりを感じてタマランでした。
あと、言うまでもないですが音楽は前作に引き続き、とても良かったです。今作では世界観がSF寄りなのもあり、電子音のアップテンポな楽曲が多く取り入れられていて、それがまた良かったですね。
ちなみに、UIのデザインと2Bのモデリングについては、製作者ブログで解説されているのでぜひ読んでみてください。
ただ、意匠に意味を持たせて欲しだけ
色々書きましたが、僕はただ、世界観やキャラクターなどの多くの「良い要素」にしっかり意味を持たせて、それを数珠繋ぎにして世界観を構築して欲しいだけなんです。後付けでもいいから、無理があってもいいから、キャラクターの背景や世界の成り立ちに「なぜそうなのか」という設定をしっかり加えて欲しい。製作者の頭の中にあるだけじゃダメなんです、鼻くそほじりながらゲームしてるようなアホにもわかるように、丁寧に演出してほしいんですよ。せっかくの世界観が、本当にもったいない…。
良いところは確かにある。しかし
とまぁ、良いところだけを見ると「最高!フゥ〜!」なんですが、やはりゲームはアートワークや世界観が良いだけではダメなんですよね。ゲームプレイのモチベーションとなるストーリー、プレイヤーの分身となるキャラクター、そして絶対に外せない、アクションゲームの骨である戦闘システム。これらが渾然一体となって、総合的に「良いゲーム」を成り立たせるわけで。一部だけが良くても、やはり、「良いゲーム」とは呼べない。
なので、世間的な「良いゲームだ!」という評価には疑問を感じつつ、今日もまた新たなゲームを遊びながらこうしてピーチクパーチクとゲームの感想を書き続けるのであります。