超ゲームウォーカー!

search

【感想】劇場版 ラブライブ! / 中身のない物語と、アイドルアニメ的見せ場の消失について

ラブライブ!The School Idol Movie

にっこにっこにー…はぁ。

こんにちは。コウノ アスヤ(です。

TVシリーズ全26話のラストを飾る劇場版「ラブライブ!School Idol Movie」が、3週間で14億という興行収入をたたき出しました。ラブライブが純粋な所謂オタク向けアニメであることや、映画の出来とは無関係な特典商法などもあって、かなり話題になってます。とはいえ元々人気作品だし、ある程度話題になるのは当然かもしれません。

楽しみにしていたので前情報を全く入れずに観てきたのですが、これ本当に3週連続1位ですか?

TVシリーズから彼女たちに残されていた課題とは

卒業する3人
TVシリーズのその後を描く劇場版アニメは往々にして、「無い問題を捻出し、それを解決しようとする」きらいがありますが、本作はそれ以上にひどく「残っていた問題をゴリ押し解決する」という謎の荒業を成し遂げています。

そもそもTVシリーズラストにおいてμ’sが出した「9人揃ってこそμ`s。だから解散する」という結論はイマイチ腑に落ちなかったというか、「みんなで叶える物語」なんてキャッチフレーズまで付けておいて、今さら自分たちの都合だけでやめちゃだめでしょう、と感じてました。いわゆる「もつもの、もたざるもの」的なアレ。

そして案の定、劇場版ではこの「責任」にたいして、μ’sはどう答えを出すのか、といった部分にフォーカスがあたっていました。ここまではいいんですが…。

前半:驚くほど中身のない物語

ジャンプする凛

次回のラブライブがドーム開催になることが決定され、その知名度向上に一役買われたμ`sは、スクールアイドルに興味をもったNYのテレビ局による現地でのライブ中継を行う。そして、あまりにも人気が出すぎたために「やめないで欲しい」という声が多方面から挙がるが…

そもそもこの劇場版は、一本の映画としてあまりにも中身がなさ過ぎる。前半1時間を使って描かれるニューヨークのシークエンスでは、知らない土地に降り立ったμ’sの面々がキャッキャワイワイする光景しか描かれず、他国でライブする意味が、後半に繋がる何かが、全くもって感じられません。

ちなみに、「物語が進まないこと」自体は問題じゃないんですよ。けいおん!だって、特に大きく物語が進んでいくようなアニメでは無いですが(結果的にそれが後から効いてくるのは置いていて)、その何気ない会話やキャラクターの行動で、確かに唯たちの物語が「語られていく」。ニューヨークの一連のシークエンスで、一体なにが語られたんでしょうか。アキバとニューヨークが似てる?知らんわ!キャラ同士の萌えるやり取りはそのままに、描ける事はもっとあったはずなのに。

でもミュージカルシーンはすごい良かったですね。絵も綺麗だし、すごい動くし、音楽も良いし。でも、基本ミュージカルシーンって物語を歌で語っていくものなのに、「雨が降ったけどそんなこと関係ないよ、ほらやんだ!」とか「バレずに街から出なきゃ!」とかいう、この期に及んでキャラ性の掘り下げみたいなことしてるから…。マジでなんの意味も無いものになってしまっていました。TVシリーズならいいですよ。足取りゆっくりだし。でも今回は、話に中身がない上にミュージカルでも進まないから、もうだめだ。改めてアナ雪のミュージカルシーンとかすごいなって思いましたね。ミュージカル中もしっかりと物語が進んでる。

ちなみに、真姫がこっそり作っていた新曲の件や、路上シンガーの件など、「お?なにやら」なものは全て、それぞれ後半のとある1シーンの為のもので、物語全体にとってはほぼ全くもって意味をなしてない。

ここまでで1時間弱。中身が無いならないで、下手に後半につなげようとせずに、完全に旅行みたいな話にすれば、良かったのに。

後半:μ’sが出した答えが微妙すぎる

ホテルでのμ's

結論から言うと、彼女たちは「あくまで私達はスクールアイドルだし、やっぱりやめます」という答えを出したんですが、これがあまりに微妙な結論すぎてモヤモヤしました。

「やめる」という結論はぜんぜん良いんですが「なぜやめるのか」に対する答えが、唐突に登場した「スクールアイドル論」だったので、見てるこちらとしては困惑しました。TVシリーズ序盤で既に「初めは学校の為だったけど、今は楽しいからアイドルやってる」という穂乃果の発言があるように、彼女たちはそもそも「スクールアイドルであること」それ自体にはそこまで意味を感じてはいなかったはずです。もし仮に、映画としてそういう落とし所にしたいのであれば、本来ならば前半で「スクールアイドルとは」を語っておくべきでしょう。ニューヨークというまったく別の世界で、学校とは遠くはなれた世界で、「スクールアイドル」という存在を改めて思い直す、こういうストーリーにしても問題なかったんじゃないですか。ニューヨークで登場したまるで幽霊のような謎の女性とのやりとりや、池を飛び越えるメタファー的描写も、全然前後に繋がるような書き方がされてないし、ほんと、前半1時間なにやってたのよ…。

加えて、言い訳のように穂乃果が思いついた「スクールアイドルみんなでライブをやる」というアイデアは、確かに展開としては熱いんですが、結果的にμ’sがセンターを陣取ってたのには笑いました。μ’s以外はみんなバックダンサーかよ。意味ねえ。

ライブシーンのクオリティはすごい。けど、エモくない…

ニューヨークでのライブシーン
ここまで書いてきたことはすべて、ライブシーンに集約されるといっても過言ではありません。

盛り上がるシーンで流れる劇伴が主人公達による歌で、画面に映るのは主人公たちのダンス、そしてそのパフォーマンスは、主人公たちにとっては晴れの舞台であり、戦いの場でもある。

アイドルアニメにおける「ライブシーン」というのは、物語的な見せ場と演出的としての盛り上げがアイドルのパフォーマンスによってリンクする、とてもエモーショナルなものなんですよ。

けどそれは、そのライブシーンに至るまでの「過程」を見ていればこそであって、ライブシーン単体で見せられてもイマイチピンとこない。それこそ「物語」がなさすぎる。TVシリーズ1期3話の講堂でのライブシーンだって、そこに至るまでの過程があるからこそ、歌って踊る3人にグっとくるわけで。

NYでのライブは、到着してからライブまでの1時間がなんにも繋がってないし、スクールアイドルイベントでのライブもトントン拍子すぎるし、最後のライブもスーパー唐突でポカーン。全部過程が省かれ過ぎてて全然エモくないです。全部分断されすぎ。

3Dモデルと作画の切り替えや、音楽はすごい良いのに、もったいない。本当にもったいない。ちくしょう!もったいないー!

これでいいの…?

ラブライブのロゴ
確かに、シーンシーンは綺麗だし面白いんですよ。でもラブライブってこんな、彼女たちの一挙手一投足を眺めて楽しむだけのポルノみたいな作品でしたっけ。

たしかに、細かいことを気にせずに見せたいものを見せるような映画は他にも沢山ありますよ。カンフー映画やゾンビ映画だってその類ですが、それでも見せ場が一番おもしろくなるようにそれ以外を構成するべきでしょう。こんなことなら、ニューヨーク旅行とかいってただ彼女たちの楽しそうな雰囲気を描くような映画にしてくれていた方がまだ良かった。ちくしょうなんでだ、確かにTVシリーズでは彼女たちに物語があったはずなのに。ライブシーンも、エモかったのに…。

本当に、μ’sの締め括りがこれでいいんでしょうか。

この映画、あまりにも中身が無い2時間に退屈したし、全くもって褒め称える気にはならないです。そしてこの映画が海街diaryやマッドマックスを差し置いて、3週連続で1位をとっているという現実に恐怖を覚えます。怖すぎる。

みんなこれまで、ラブライブをそういう風に楽しんでいたんでしょうか。ラブライブの物語も楽しんでいたのは、僕だけだったんでしょうか…。

この記事をSNSにシェア

feedly Feedlyで購読

この記事を書いた人

asuyakono

コウノ アスヤ

1992年生まれ、岡山県出身。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業した後、都内でデザイナーとして活動中。小さい頃からゲーム好きで、四六時中ゲームのことを考えている。

アクセスランキング